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北朝鮮の国営企業の経営方式には、大きく分けて3つがある。まず、生産計画と資金調達、財政管理、収益の使い方などの決定権を持つ独立採算制企業。次に、それらすべてが国の指示の下に運営される予算制企業。最後に両者のハイブリッド型だ。

予算制企業の場合、国からいくら予算を取り付けるかが課題となるが、その現場ではワイロが飛び交う事態となっている。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

咸鏡南道(ハムギョンナムド)端川(タンチョン)市のある企業所幹部によると、来年の予算編成が完了する12月になると、予算制企業の幹部は上部機関の幹部のもとに足繁く通う。予算を少しでも多く得るために、予算決定権を握る幹部にワイロを渡しているのだ。

「独立採算制企業とは異なり、予算制企業は従業員の月給と企業経営に必要な資金を国家予算から受け取るので、企業所が提出した翌年度の予算案をそっくりそのまま通してもらえるか、一部削除されるかが非常に重要だ」(幹部)

独立採算制企業は、国に高額の税金を収めなければならず、利益をプールすることは認められていない。それでも自由な経営ができるため、企業の行く末は経営者の手腕にかかっている。

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平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋が挙げた平城(ピョンソン)市の食料工場の場合、トンジュ(金主、ニューリッチ)から投資を募り、ヨモギで作った酒を生産したところ、消費者の間で好評となり、かなりの儲けが出た。それを元手に技術者1人、労働者5人に生活費と食糧を支給できた。

ただ、平城市内にある約180の企業のうち、自社製品を生産しているのは35社だけで、従業員に給料を支払えているのはわずか5社だけだという。

(参考記事:北朝鮮、新義州で「砂ビジネス」大盛況…従業員も当局も大歓迎

一方、予算制企業は、病院や上下水道などの公共部門で、製品の生産をそもそも行わない、日本で言うところの地方公営企業に近い。予算案は道や市の人民委員会(県庁および市役所)の当該部署や地区計画委員会の検討を経た上で、国家予算から支払われる。

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だが、この検討の過程で、企業と役所の間で事細かく折衝が行われる。当局は財政状況がよくないため、何も生産しない予算制企業に回す予算を少しでも減らそうとするのだ。そこで企業側は、役所の担当幹部を懐柔して、予算をより多く取り付けるためにワイロを渡すのである。

RFAによると、咸鏡南道のある企業は、道人民委員会と地区計画委員会の幹部にそれぞれ酒20キロとガソリンクーポン10枚――米ドル換算で150ドル(約2万500円)ほどのワイロを掴ませ、予算案をまるまる飲ませるのに成功したという。

収賄への取り締まりが行われていることから、現金の受け取りには抵抗感を示す幹部だが、換金性のある品物やクーポンなら受け取ってくれるとのことだ。

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(参考記事:北朝鮮、警察官に「ワイロは受け取らない」誓約書を出させる

このようなロビイングを行わず、予算が削減されてしまうと、その被害は住民がこうむることになる。例えば道路や公園、上下水道の管理、清掃を企業に任せる予算がなくなり、住民を動員して行わざるを得なくなるのだ。

一方、両江道(リャンガンド)雲興(ウヌン)郡のある予算制企業に勤める情報筋によると、予算制企業の予算が削減された場合、従業員に月給が払えなくなってしまう。そうなれば、彼らは無断欠勤して商売に精を出すことになり、公共インフラが維持できなくなってしまう。

結局、この企業も先月、両江道人民委員会の担当幹部に4回も面会し、何らかのワイロを渡して、予算案を通してもらったとのことだ。