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北朝鮮は2020年1月から、新型コロナウイルスの国内流入を防ぐために国境を閉鎖し、一切の貿易を停止した。昨年からは、大規模な消毒施設を完成させた上で、部分的に輸入を行うようになっているが、コロナ前のようにさかんな貿易は行われていない。

かつては中央と地方の貿易会社、外貨稼ぎ機関、大手の商人から零細商人に至るまでがそれぞれ合法・非合法の輸出入を行っていたが、北朝鮮当局は今回のコロナ禍を機に「国家唯一貿易体制」を確立させ、国主導で必要なものを必要な分だけ輸入する体制に持っていこうとしている。

コロナ前のように市場と資本の力で社会が動くのではなく、すべてを国が掌握する、1980年代以前のような体制に戻そうとする動きの一環だ。トンジュ(金主、ニューリッチ)に象徴される実質的な資本家の影響力で経済が左右される状態は、体制の崩壊に繋がりかねないと考えているのだろう。

しかし過去30年間、貿易で潤ってきた国境沿いの地域が、そう簡単に商売を諦めるはずがない。

中国のデイリーNK情報筋は、今月に入って、国境を流れる鴨緑江一帯で、個人単位の密輸が急増していると伝えた。その手法は、夜間に船を使って品物も運ぶというものだが、ひとけの少ないところでは、昼間にも行われている。

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北朝鮮から中国へは、国連安全保障理事会の北朝鮮決議で禁輸品とされている石炭、アルミニウム、銅などの鉱物資源や、制裁対象ではない薬草類が輸出されている。また、ヤギ、ヒツジ、ウサギ、ニワトリといった生きたままの家畜も輸出の対象だ。仕入れ値が中国の市場価格より安いため、需要が高いとのことだ。

ちなみにヤギは1頭で500元(約9620円)、ヒツジは800元(約1万5400円)、ウサギは30元(約578円)で密輸出されるが、いずれも2.5倍から3倍の値で中国の市場で売れる。非常に儲けが大きいため、北朝鮮から家畜を仕入れようという中国側の商人が増えているという。

逆に中国から北朝鮮に輸出しているのは、ビール、スナック菓子、ハム、鴨の燻製など様々な食料品だ。

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これだけ密輸が急増しているのは、中朝両国の国境警備が以前に比べて多少緩和されたためのようだ。

北朝鮮は、国境から1〜2キロの地域に緩衝地帯を設け、許可証がなければこの地域に入れないようにしているが、以前のように無条件で射殺するようなことはほとんどなくなった。

(参考記事:厳重すぎる北朝鮮の国境警備、接近には5機関の承認が必要

この間は従来の国境警備隊に加え、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の特殊部隊が地域に展開し、異常に厳しい国境警備を行い、通常ならまずありえない中国人への銃撃も行うほどだった。だが、今ではワイロで簡単に買収できる、コロナ前のような状況に戻っている。

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(参考記事:北朝鮮警備隊が中国人に無差別銃撃…国境地帯で死者続出

そればかりではない。

「密輸を取り締まるべき国境警備隊が、直接密輸に加担するケースも少なくなく、密輸が絶えない」(情報筋)

コロナ前は個人が国境警備隊の庇護を受けて密輸を行うケース、両者がコラボして密輸を行うケース、国境警備隊独自で密輸を行うケースがあったが、これらが戻りつつある。

また、昨年まで中国公安当局は、北朝鮮との密輸を摘発すれば多額の罰金を科していたが、ゼロコロナ政策が終了した今では、かなり国境警備が手薄になった。

北朝鮮の国境沿いの地帯では、国境が再び開かれ、以前のように自由に貿易をしたいという声が高まっており、当局もそんな要求を抑え込むのに難儀しているようだ。

北朝鮮は、国境線沿いに高圧電流の流れるケーブルや鉄条網を設置。監視カメラを現地ではなく平壌でモニタリングするなど、様々な手を打ってきたが、やはり人と物の自然な流れは押し止められないようだ。「国家唯一貿易体制」の確立も、絵に描いた餅で終わるかもしれない。

(参考記事:金持ちも餓死「希望拷問」に苦しむ北朝鮮の人々