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北朝鮮で2021年5月、国家糧穀販売所の運営を始めた。「コメなどの穀物価格を安定させるため」とその目的をうたっていたが、市場での流通を禁じて販売所に独占させ、経済の主導権を市場から取り戻すのが本来の目論見だった。

ところが、ここへ来て販売所の閉店が相次いでいると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋は、先月6日に安州(アンジュ)市内の3つの洞(ドン、町に相当)ごとに1つあった糧穀販売所がなくなったと伝えた。安州市は19の洞、14の里(リ、字に相当)からなるが、人民委員会(市役所)のある龍淵洞(リョンヨンドン)の糧穀販売所だけが残され、あとは閉店した。

市場より穀物を安く販売していたが、売る品物を買い付ける資金がなく、運営がうまく行っていなかったと情報筋は伝えた。当局が糧穀販売所で穀物販売を行うという政策だけ示し、予算の配分は行わなかったわけだ。

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糧穀販売所での販売一本化は、むしろコメ価格が上昇する結果を呼んでしまった。最近、食糧難がさらに深刻化し、世論が悪化したことを意識した当局は糧穀販売所を閉店して、市場に対する統制を緩和する措置を取った。

平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋は、定州(チョンジュ)市内に2カ所あった糧穀販売所が、金正恩総書記が2021年9月に穀物買取と食料供給体系を改善する内容の施政演説を行った後、6カ所に増やされたが、現在はすべて閉店したと伝えた。情報筋は、糧穀販売所での穀物販売にそもそも懐疑的だった。

「資本主義的な市場をなくし、食糧流通を国が掌握して社会主義を守ると言って糧穀販売所を設置したが、正常な運用は最初から不可能だった」(情報筋)

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糧穀販売所が正常に運営されるには、協同農場で収穫された穀物を買い取らなければならないが、その価格は市場価格より2〜3割安い。つまり、協同農場の儲けがそれだけ少なくなるということだ。

そうなっては農場運営に必要な営農資材を購入する資金がなくなってしまう。そのため、農場は糧穀販売所ではなく商人に売るようになった。また、糧穀販売所に売るコメから小石を取り除かず、重さを増やして売ることもあった。

(参考記事:農民を貧困に、市民を飢えに追い込む北朝鮮の「国営米屋」

糧穀販売所を運営するには、協同農場が問題なく運営できるように肥料やビニール膜などの営農資材を国が供給しなければならないが、政府は何もせず、すべてを地方に丸投げするだけだ。これで上手くいくはずもなく、市民の不興を買うだけの結果となった。

(参考記事:食糧不足でも金正恩の「お菓子セット」が重要視される北朝鮮

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食糧難と価格高騰は政府の失策が招いたことだ。そのことを知る市民は不満を抱くようになり、それを恐れた地方当局は結局、従来どおり市場での穀物販売を認めるようになったということだ。しかし、供給が不安定で価格が安定せず、市民の不満は収まっていない。

統制のきかない市場を嫌った故金正日総書記は2009年、貨幣改革(デノミネーション)を行い、旧紙幣から新紙幣への交換額に上限を設け、市場に蓄積された富をチャラにしようと試みた。その結果、北朝鮮経済は大混乱に陥った。

その教訓からか金正恩氏は、市場に手を付けようとしなかったのだが、最近になって市場を押さえつけ、計画経済に戻そうとする動きを見せている。

(参考記事:「市場でコメ売るな」命令にあの手この手で抵抗する北朝鮮商人