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過去3年間、全世界は新型コロナウイルス感染症に振り回されてきた。北朝鮮ももちろんその例外ではないが、北朝鮮が振り回されているのはコロナだけではない。

国営の朝鮮中央通信は昨年6月、黄海南道(ファンヘナムド)海州(ヘジュ)市で「急性腸内性伝染病」の感染者が発生したと報じた。国内での感染症の事例を同通信が報じるのは極めて異例のことだが、報じられていない感染事例は他にも多数存在する。主に腸チフス、コレラといった汚染された水によって広がる感染症だ。

今回、問題になっているのは結核だ。当局が検診を行ったところ、多数の患者、保菌者が発見されたと、咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えている。

(参考記事:国境警備隊「壊滅」も…北朝鮮で別の感染症、金正恩氏が対策指示

咸鏡北道当局は、保健防疫部門の専門家からなる総合検病検診組を立ち上げ、先月20日から清津(チョンジン)市内の金策(キムチェク)製鉄所の従業員を対象に、検診を行わせている。

その結果は悲惨なものだった。

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23日の時点で、労働者全体の3割の検診が終わったが、レントゲン検査で8割以上が結核を患っていることが判明したというのだ。朝鮮総連の機関紙朝鮮新報は2006年3月、同社の従業員数を5万人と報じている。つまり、少なくとも1万2000人もの保菌者や患者がいるという計算になる。ちなみに、同紙は清津市の人口が約40万人であるとも報じている。

保健防疫当局は、レントゲン検査車4台を動員して検査を進めているが、さらに多くの保菌者や患者がいることは間違いないだろう。また、他の感染症に対する検査も順次行っている。

3年間の非常防疫期間(ゼロコロナ政策)の間、工場従業員に対する食糧配給が途絶え、栄養状態が悪くなったことが、結核患者の多さに現れているというのが、咸鏡北道の保健イルクン(幹部)の見立てだ。

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また、食糧不足に加え深刻な医薬品不足で、病気になっても薬も飲めないまま重労働に従事していたことで体が弱り、本人も知らないうちに結核にかかっていたのだろうとも見ている。

情報筋によると、今まで体調が良くなくても正確な診断書を出してもらえず、充分な休息を取れずに出勤していた人も多く、今回の検診で結核にかかっていたことを知った彼らは涙目になっているとのことだ。

診断書が出ない理由について情報筋は触れていないが、多額の費用がかかるため病院に行けないためか、行けても医師が政治的な理由で呼吸器疾患との診断を避けていたかのどちらかだろう。

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(参考記事:金正恩氏「ゼロコロナ」宣言でコロナとの診断が不可能になった北朝鮮の病院

結核と診断された従業員の中には、感染を恐れた友人や隣人から避けられるのを嫌がり、知らないふりをして平然と日常生活を送っている人もいるという。「知らぬが仏」ということだが、これでは感染が広がる一方だろう。ちなみに、患者1人は10人から15人を感染させる可能性がある。

今回の結果に相当のショックを受けたのか、咸鏡北道当局は、道内の労働者の健康問題の解決に総力を傾けると明らかにした。製鋼所や炭鉱などの国家計画遂行単位、つまり国の定めた計画経済の計画の対象となっている企業の従業員を対象に、来月までに検診を完了させ、その後に対策を論じる方針だと、情報筋は伝えている。

だが、そもそもの原因は、国境を閉鎖し、貿易を停止させ鎖国状態に入るという、極端とも言える北朝鮮のゼロコロナ政策にある。食糧や医薬品の不足は、極度に中国に依存する経済の現状を無視して、輸入を完全に止めてしまったことから来ている。つまり、今回の事態は、北朝鮮政府の失策によるものと言っても過言ではないだろう。

(参考記事:塩水にアヘンを混ぜて注射…医薬品不足の北朝鮮で「死の民間療法」

なお、世界保健機関(WHO)は昨年10月、北朝鮮の結核患者、保菌者が13万3000人に達し、人口10万人あたり513人が結核である高リスク国に指定している。