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コロナ以降、医薬品の需要が急増している北朝鮮。だが、供給は全く追いついておらず、品薄、高値傾向が続いている。医薬品やその原材料を中国からの輸入に頼ってきたが、2020年1月に新型コロナウイルスの国内流入を防ぐとして、国境を封鎖し、貿易を遮断したため、入荷しなくなったためだ。

金正恩総書記は、自宅の薬箱にある薬を放出する措置を取ったが、こんなプロパガンダショーが何の役にも立たないことは言うまでもない。人々は、医薬品を自宅で製造することで対応しているが、当然問題だらけだ。

(参考記事:「金正恩印の愛の常備薬」の出どころは朝鮮労働党の末端党員の薬箱

コロナ前には、解熱剤、鎮痛剤、消化薬、止瀉薬などを市場で購入できたが、コロナ禍で輸入がストップした上、当局が無許可の医薬品販売を取り締まるようになったため、入手そのものが難しくなったと、デイリーNKの複数の内部情報筋が伝えている。

(参考記事:響き渡った女子中学生の悲鳴…北朝鮮「闇病院」での出来事

薬は薬局で購入するように当局は指導しているが、買いに行ったところで在庫はない。品薄であることに目をつけた薬局が、アスピリンやアセトアミノフェンなどの解熱鎮痛剤や、アモキシシリンなどの抗生剤を、国定価格より高値で横流ししているからだ。どうしても必要なら、以前のように市場で買うか、薬局で薬代にワイロを上乗せして払うしかない。

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中央検察所は、最近行われた第14期第8回最高人民会議(国会に相当)の中央検察所事業報告で、「薬が高くて買えない」との市民の訴えを受け、平壌市の大城(テソン)区域、南浦(ナムポ)市、咸興(ハムン)市、元山(ウォンサン)市の薬局に対する検閲(監査)を行ったと報告した。また、横流し、ボッタクリなどを強力に取り締まる方針を示した。

しかし、そもそも国営工場で製造されている薬は、国内でも原材料が調達しやすい漢方薬がメインで、あまり効果がないことから消費者に人気がない。

そこで、キキョウや柳の葉、蒼朮(そうじゅつ、オケラの根)などの薬草を自宅で煎じて飲む人が多い。こうした民間療法は、北朝鮮政府がコロナに効果があるとして推奨していたものだ。

(参考記事:鼻うがい、柳の葉…北朝鮮政府が推奨する「対コロナ民間療法」

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また、以前から薬の代用として使われてきたアヘンを使う事例も増えている。

平安南道(ピョンアンナムド)では昨年、高熱と痛みを訴える患者に、食塩水にアヘンの粉を混ぜたものを静脈注射し、死亡させる事件が起きている。当局は昨年末、麻薬類の乱用が急増していることから、アヘンや覚せい剤の集中取り締まりに乗り出したが、薬が手に入らない状況で代案が示せず、取り締まりもさほど成果が上がっていない。

(参考記事:【北朝鮮国民インタビュー】アヘンと塩水うがいでコロナ自主隔離に耐えた

一方、注射器の正しい使い方についての指針が示されていないため、一度使った注射器を、熱した食塩水で消毒して再利用し、別の感染症に罹患する事例も出ている。

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そんな中、朝鮮労働党機関紙・労働新聞は今月2日、「医薬品の種類と生産量を増やそう」という記事で、「医薬品の需要を円滑に満たすのは、いかなる条件下でも必ず実行されるべき重大な事業」として、製薬工場に対して原材料の確保、戦略的な経営管理が必要だと主張した。