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北朝鮮の金正恩総書記の妹、金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党副部長は、全国非常防疫総括会議で、韓国在住の脱北者が北朝鮮に向けて飛ばしたビラなどに、新型コロナウイルスがなすりつけられていたなどと主張した。

第二次大戦中の日本では、「米軍が空から配布した伝単(ビラ)には毒が塗ってあり、触ると手が腐る」などといった宣伝がなされていたようだが、そんなカビの生えた手法を2022年の今になってまた持ち出したようにも思える。

(参考記事:「不倫関係」を暴露…金与正が神経質になる対北ビラの中身

一方、金正恩総書記は「領内に流入した新型コロナウイルスを撲滅し、人民の生命と健康を保護するための最大非常防疫戦で勝利」したと宣言し、ゼロコロナが達成できたと主張した。

しかし、国内の一部地域からはコロナを疑わせる症状の患者が発生したとの情報が伝わっている。

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咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、核実験場があることで知られている吉州(キルチュ)郡で、咳、痰、微熱、呼吸困難などの症状を見せ、1日に20人以上が郡の人民病院を訪れたと伝えている。中には、これらの症状に加え、全身の関節に痛みを感じると訴える人もいるとのことだ。

人民病院は、患者に対して一様に「夏風邪」との診断を下している。

地元の40代の住民は今月初め、人民病院を訪れてコロナ感染を疑わせる症状を訴えたが、医師は「今年の夏風邪はコロナと症状が似ているとの保健省の通報があった」として、夏風邪だとの診断を下し、風邪薬を処方したとのことだ。

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また別の住民は、咳と微熱が続き、結核かもしれないと思って病院で診察を受けたが、夏風邪との診断が下されたという。

情報筋によると、政府が国内でのコロナ感染者の発生を正式に認めた5月12日以降は、ちょっとした症状でもコロナとの診断が下されていたが、今では逆に、いかなる症状があっても風邪との診断を下すようになっている。

医師も、保健省の指針に従わざるを得ず、すべて夏風邪との診断を下しているものと思われる。

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PCR検査や抗原検査を受けられる施設が整っていないことから、正確にコロナだと診断することは難しいが、本当にコロナだったとしても、公式に認められることはないだろう。

「無謬の存在」である金正恩氏が「ゼロコロナ達成」を宣言した以上、コロナという診断を下せば、金正恩氏に歯向かう反逆者扱いされかねないからだ。

ゼロコロナ宣言以前から、毎日発表される発熱患者の数は「順調に」右肩下がりを続けていたが、これは地方では発熱患者の数を過少報告したことによるものと思われる。政府も警告を発したのだが、結局はゼロになったまま、発表は今月10日を最後に終わってしまった。

今後、たとえ発熱患者が発生しても、すべて夏風邪扱いすればいいとなったことで、発熱患者が減らないことで処罰されることを恐れていた地方当局者は胸をなでおろしていることだろう。一方で、一般国民は、たとえコロナに感染しても、適切な治療が受けられないことになる。

(参考記事:北朝鮮、地方政府のコロナ感染者「過少報告」を厳しく批判