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「8.3製品」とは、リサイクルされた廃材などを原材料にして作った生活必需品のことを指す北朝鮮の用語だ。故金正日総書記が1984年8月3日にそのような指示を出したことに由来する。

しかし、製品の質はお世辞にも良いとは言えず、消費者からは評判が悪い。

米政府系ラジオ・フリー・アジア(RFA)の平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋は、新義州(シニジュ)市内の店舗に8.3製品が積まれているが、実生活に必要なものがなく、買う人がいないと伝えた。

8.3製品は、地方政府が運営する集売商店、直売店で販売されており、市場で売られている製品よりも若干安い。これらの店舗には鞄工場、化粧品工場、日用品工場から出た廃材で作った鞄、機能性化粧品、ギター、ニット帽などがあり、1万北朝鮮ウォン(約160円)以上する。

しかし、極端なゼロコロナ政策で輸入がストップし、農業も不振を極める北朝鮮は、深刻な食糧難に襲われており、各地で餓死する人が発生。1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」以降で最も深刻な状況と言われている。

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そんな中で、お肌に気を使ったり、音楽を楽しんだりする余裕のある人がどれだけいるのだろうか。最も必要とされるのは安い食料品だと思われるが、これら店舗では一切売られていない。

(参考記事:「あちこちで金持ちが餓死」むなしく消える金正恩の叫び

江原道(カンウォンド)の情報筋も、元山(ウォンサン)市内の店舗で、各工場と企業所が人民消費品(生活必需品)生産国家計画(ノルマ)に基づいて生産した8.3製品が売られているが、全く売れず、売り上げノルマ達成が危ぶまれる状況で、関係者は頭を抱えていると伝えた。

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売られているのは、元山食料品工場で生産した清涼飲料水、藁加工工場で生産した麦わら帽子、鞄などだ。サイダーやジュースは1本2000北朝鮮ウォン(約32円)、帽子や鞄は3000北朝鮮ウォン(約48円)だが、食糧難の今では贅沢品扱い。だれも買おうとしないという。

8.3製品は、上述の故金正日氏の指示に基づき、各地の工場、企業所などが生産販売に取り組んだが、1990年代の経済難で生産ができなくなり、中国から入ってきた安くて質のいい製品に取って代わられた。

そして、2020年4月の最高人民会議(国会に相当)第14期3回会議で制定された「リサイクル法」に基づき、再び8.3製品の生産が奨励されるようになった。

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だが、火葬場が遺体から剥ぎ取った死装束で服を、棺桶の板で家具を作り、その功績が認められ表彰されるなど、消費者の需要と嗜好を無視して、とりあえず「数合わせ」に必死になっている。

(参考記事:金正恩命令「火葬場でリサイクル」の実態に北朝鮮国民が驚愕

また、深刻なモノ不足の中で、もはやリサイクルするものはしつくし、稲の苗を霜から守るのに欠かせない中国製のビニール膜を、金正恩総書記の名前で子どもたちに配るお菓子セットのパッケージに流用するなど、本末転倒な事態も発生している。

(参考記事:食糧不足でも金正恩の「お菓子セット」が重要視される北朝鮮