春の農業の準備は「泥棒」から始まる北朝鮮

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農繁期を控えた北朝鮮の農民を、毎年苦しめているものがある。窃盗だ。

北朝鮮の農場はコロナ前から、農作業に必要な様々な物資が不足していた。農業は国家計画に基づいて行われ、収穫物は国に上納させられるのだから、必要な物資も国から支給されてしかるべきだ。国がその義務を果たさないので、協同農場は借金をして調達していた。中には、他の農場から盗み出す者もいる。

(参考記事:ないないづくしで田植えを迎える北朝鮮の協同農場

北朝鮮の刑法91条は、国家財産を盗んだ場合、最高で9年以下の労働教化刑(懲役刑)に処すると定めている。農場の農業機械は国家財産に属するため、部品の窃盗にはこれが適用される。しかし、深刻な飢餓で治安が乱れた1990年代後半の「苦難の行軍」の時期には、こうした犯罪に対しても公開処刑が繰り返された。

(参考記事:美女2人は「ある物」を盗み公開処刑でズタズタにされた

現在の状況は当時を彷彿させるようだが、農民としても、背に腹は代えられないのだ。

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極端なゼロコロナを目指した北朝鮮は2020年1月、国境を閉じてしまい、貿易もできなくしてしまった。中国からの輸入物資に多くを頼ってきた北朝鮮はたちまち困窮した。去年から部分的ながら輸入が再開されたものの、依然として著しいモノ不足が続き、盗難が続発している。

平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋によると、田植えの前に一年の農業への決意を示す農業機械出帆式を控え、トラクター、田植え機の部品の盗難が相次いでいる。必要な部品を買い求めようにも市場に入荷しないため、他人の物を盗むしかないというのが情報筋の説明だ。

(参考記事:コロナ鎖国で部品不足…北朝鮮で農業機械の7割が稼働できず

道内の文徳(ムンドク)郡では、上八(サンパル)農場の盗賊団が、立石(リプソク)と龍林(リョンリム)の両農場に忍び込み、逮捕される事件が起き、地域全体が戦々恐々としている。盗まれた者は、また他人の者を盗んで賄うという悪循環に陥っているという。

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「農場は若い農場員を動員して、他の農場からタイヤ、ベアリング、バッテリーなど主要な部品を盗み出している」(情報筋)

朝鮮労働党機関紙・労働新聞は14日、全国的に1万5000台のトラクターと8000台の田植え機が修理され、成果が日々拡大している」と報じたが、拡大しているのは盗難被害の方だろう。続発する盗難事件に、地元当局は何ら対策を講じておらず、農民が自主的に警備する以外に方法はないという。

(参考記事:金正恩氏が重視する麦、収穫遅延の理由は「鎌」の不足