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北朝鮮の各協同農場は6月の田植えを前に、農業機械の整備、農業用品の確保など準備に追われている。しかし、順調に進んでいるとは言えない状況だ。

平安南道(ピョンアンナムド)の海岸部に広がる大穀倉地帯「十二三千里平野」。現地のデイリーNK内部情報筋は、その中心にある文徳(ムンドク)郡の協同農場で、今年の農作業の準備が全く進んでいないと伝えてきた。

まず、農業機械の稼働準備が極めて不安定な状態となっている。農場の機械化作業班に電力が全く供給されておらず、部品不足で15台のトラクターのうち、稼働できるのは1台に過ぎず、田植え機、除草機など他の農業機械は全く稼働できない状態だ。

また、農作業に使う牛は各作業班(100ヘクタールごと)に15頭(オス8頭、メス5頭、子牛2頭)を所有しているが、飼料の供給と畜舎の管理がきちんとされていない。また、凍った土地の上で越冬した牛は、春になって栄養不足などに陥り次々に死んでいっている。「生き残った牛がいることが奇跡」との声が上がるほどだという。

現代農業において必須である肥料と農薬の供給状況も、極めて深刻だと情報筋は指摘した。文徳郡の某協同農場における供給の実態は次のとおりだ。

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平安南道文徳郡某協同農場の2018年肥料、農薬調達状況

今年1年の農業に必要な肥料、農薬がほとんど確保できていないことがわかる。さらに深刻なのは、予算不足に加え、肥料、殺虫剤の供給が需要に追いつかず、市場で価格が高騰していることだ。

現在、市場では中国製の複合肥料1キロが4400北朝鮮ウォン(約57円)、中国製の尿素肥料が3200北朝鮮ウォン(約41円)、除草剤は2万北朝鮮ウォン(約260円)、殺虫剤は1万5000北朝鮮ウォン(約195円)で取引されているが、農場には購入する予算がない。つまり、人糞で作った肥料に頼らざるをえない状況だ。

(参考記事:北朝鮮国民の腸を「寄生虫だらけ」にする人糞集めでパニック発生

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問題はそれにとどまらない。トンジュ(金主、新興富裕層)から購入資金の融資を受けたとしても、市場に商品がないため購入できないというのだ。最近、中朝国境地帯で肥料や農薬の密輸が盛んに行われているのは、このような現実を反映したものと思われる。

北朝鮮で、肥料や農薬の主原料は中国とロシアから輸入される石油だが、国際社会の強力な経済制裁は、北朝鮮の戦略物資の輸入に大きな支障となり、それが肥料や農薬の生産にまで影響を及ぼしている。

北朝鮮政府は、南興(ナムン)青年化学連合企業所、興南(フンナム)肥料工場、順川(スンチョン)石灰窒素肥料などの肥料工場に投資を行い、石炭ガス化技術など独自の原料と技術で肥料生産の正常化するための努力を行っているが、財源と技術の不足で充分な成果が出せずにいる。

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専門家によると、北朝鮮の肥料消費量は年間155万トンだが、実際の生産量は50万トンにとどまっている。ちなみに韓国の農業畜産新聞によると、韓国の2016年の年間肥料生産量は518万トンだ。北朝鮮の人口は韓国の半分なのに、肥料生産量は10分の1に過ぎない。

北朝鮮は2012年から段階的に「圃田担当制」を実施している。家族単位で農地と生産を任せ、収穫量に応じてインセンティブを与えることで農民の労働意欲を高めるというものだ。しかし、機械も肥料もなくては元も子もない。

そんな農業に見切りをつけ、都会に働きに出る人が増えているとも伝えられる。

(参考記事:北朝鮮の農民、都会で「違法居住」…仕事を求め流入