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2021年5月に北朝鮮の平壌で行われた、朝鮮職業総同盟第8回大会。金正恩総書記が大会参加者に送った書簡に、次のような一節がある。

労働者階級と職業同盟員が輸入病と他人への依存心を断固排撃し、徹頭徹尾われわれの原料と資材、われわれの力と技術をもって経済建設と人民生活に必要なものを全て自給自足する原則を堅持するようにすべきです。

(参考記事:北朝鮮で「朝鮮職業総同盟」第8回大会

この「輸入病」とは、何でもかんでも輸入に頼ろうとする傾向のことを指す。

韓国の北朝鮮専門ニュースサイト「NK経済」は、2021年3月に北朝鮮国内で「輸入物資が入ってこなければ生産ができないかのように座視している(朝鮮労働)党員が少なくない」として、「輸入病を根絶やしにしなければならない」とする内容の文書が配布されたと報じている。

だが、極端なゼロコロナ政策で人のみならず、モノの出入りまでストップしたことで、国内が深刻な物資不足、食糧不足に陥り、一部では餓死者を出すほどの状況に陥っていることは、北朝鮮経済がいかに輸入に依存しているかを如実に示している。

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(参考記事:「金持ちまで餓死」北朝鮮国民がさまよう阿鼻叫喚の巷

輸入病の根絶など夢のまた夢なのだが、当局はそれに固執しているようだ。

中国との国境に接する両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋は、朝鮮労働党両江道委員会(道党)が、貿易依存型経済への復帰を望む声に対して「外国勢力への依存は亡国の道」などと厳しく批判したと伝えた。

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道党は、国境が封鎖された期間でも、貿易の機会を狙うばかりで、計画(ノルマ)遂行に革新と前進が全くなかったとして、両江道貿易管理局を猛批判した。

「貿易に依存すれば楽なのはわかりきったことだ。今回のように悪性伝染病(コロナ)で国境が封鎖され、岐路に立たされることになれば、皆が死ななければならないのか。今回の悪性伝染病で継続した3年間の封鎖期間に得た経験と教訓は、このような(輸入病が蔓延する)状況では、貿易と密輸が出来なければ我々は皆、死ぬしかないということだ」(道党)

そして、道党はこうも主張した。

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「実際のところ、両江道の人々は苦労したが、密輸と貿易ができなくて死んだという人はいない。皆死なずに生きているではないか。住民は苦しくとも、生きる道を探し求めて生きているのに、貿易局は一般住民にも劣る」

たしかに、現状は1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」の頃のように、次から次へと人が餓死する事態には至っていないものの、貧困層を中心に餓死する者も出て、多くの人々はギリギリの状態でなんとか生き残っている。その原因は、北朝鮮経済の実情を無視したコロナ鎖国にあるが、道党は目の前の現実が全く目に入らないようだ。

(参考記事:北朝鮮「ジャガイモ配給停止」で大量餓死の危機

一方で道党は、道内の貿易機関が、あたかもすぐにでも国境が開かれるかのように噂を広め、そうなればまた昔のように密輸ができるような空気を作り出し、民心を乱しているとして批判した。

「党と首領(金正恩氏)を裏切る言葉だけが深刻な問題なのではなく、このような混沌として複雑な環境で党の政策を自分勝手に解釈し、革命的な柱を欠いたまま、デマを広げる行為を根絶しなければならない」(道党)

(参考記事:北朝鮮「コロナ対策」貿易停止を緩和か…消毒施設の新設認可

そして、道内の貿易機関のイルクン(幹部)や関連する企業所、税関の職員、その家族に対して、国が貿易を司る「国家唯一貿易体制」の樹立に混乱をもたらし、勝手なことを言う者がいれば、行動を監視し、適宜通報し、党組織にも報告せよと指示した。

さらに、米国、日本、南朝鮮(韓国)を3つの主敵とし、それらと対立している状況で外国勢力に依存するのは亡国の道で、天に唾を吐く行為だ、両江道が生きる道が貿易、密輸だと言う者は反逆行為を犯していると指摘した。

今回の道党の批判について、情報筋は貿易関係者や一般住民の反応を伝えていないが、両江道の地理的条件、経済の現状を完全に無視した空虚なものとして鼻で笑っていることだろう。

両江道の経済は鉱業と貿易で成り立っている。様々な鉱物資源を掘り出して対岸の中国に輸出し、食料品から電化製品に至るまで様々なものを中国から輸入または密輸入して、周辺の各地域に流通させ、利益を得ていた。ところが鉱物資源の輸出は、度重なるミサイル発射と核実験が招いた国連安全保障理事会の制裁でストップ。輸入もコロナでストップしてしまった。つまり、国の政策が地元経済を破滅に追い込んだのだ。

両江道は、工業や製造業が発達している地域からは遠く離れており、生産品を運ぶには悪路を何百キロも通らなければならない。それよりも、目の前にある中国から輸入したほうが合理的だ。そもそも、国内製品も原材料を輸入に頼っていたりする。そんな現状を完全に無視して、自らを孤立に追い込む現在の政策こそが、亡国の道だ。

(参考記事:【北朝鮮幹部インタビュー】「輸入だけでなく輸出もしたい。複数の貿易ルート再開を」