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西村康稔経済再生相(当時)は2021年5月、TBSの番組で、紙幣に付着したウイルスは約1週間生きているとして、紙幣を通じた新型コロナウイルスの感染拡大について言及した。一方、ドイツのルール大学のダニエル・トット氏は、「iScience」同年8月号で、紙幣から新型コロナウイルスウイルスは3日で完全消失したとして、現金を通じた感染の可能性は極めて低いとした。

北朝鮮は、紙幣を通じた感染を防ぐと称して、紙幣消毒機の普及を進めているが、真の目的は感染拡大防止ではないようだ。デイリーNK内部情報筋が伝えた。

北朝鮮当局は昨年5月、薬局に対して紙幣消毒機を設置し、紙幣は必ず消毒してから使用するよう指示を下した。また、昨年末からは、外貨商店、百貨店での紙幣消毒機の設置を義務化した。

対外向けメディア「朝鮮の今日」は昨年12月、普通江先端技術製品開発社が、既存製品を分析した上で新たに開発したという、回転式熱風およびアルコール燻蒸紙幣消毒器を紹介した。ボンベ状の容器の中に紙幣を入れ回転させ、熱風と気体化したアルコールを噴射して消毒するというもので、5分間に3万枚の消毒が可能だという。

なお、北朝鮮ウォンにコインは存在するものの、インフレで価値がなくなったため、消毒機もおのずと紙幣専用となる。

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紙幣消毒器の独自開発と設置義務化は、金正恩総書記が昨年5月に行った平壌市内の薬局の視察が影響しているものと思われる。その場で同氏は、現金をやり取りしてウイルスが広がる可能性がある、薬局に入ってきた現金を消毒する機械をわれわれの力で作り、すべての商店に置くようにすべきだと述べた。

(参考記事:「何の役割も果たせない」金正恩氏、コロナ対策で幹部ら叱責

このような「マルスム」(お言葉)を貫徹するために、紙幣消毒器の自主開発が始まり、昨年11月から商店への設置が始まったというのが情報筋の説明だ。

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ただ、無償ではない。卓上式は1500ドル(約19万2800円)、壁掛け式は3000ドル(約38万5500円)という非常に高価な値段で販売し、卓上式の場合は2台、壁掛け式の場合は1台設置することを「推奨」しているという。つまり、どちらを選ぼうとも1店舗あたり3000ドル必要となる。

それも、公式レートではなく、ブラックレートで計算して2421万北朝鮮ウォンの支払い、それも「ヘンピョ」(事業用小切手)ではなく、現金での支払いが求められるため、5000枚近い札束で支払うことになる。

(参考記事:信用低く買い叩かれていた北朝鮮の「トンピョ」、市場から姿を消す

これに対して、薬局や外貨商店からは「国による押し売りだ」と声が上がっている。また、国産紙幣消毒器の品質に対しても疑問の声が上がっている。

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「本当に消毒できるかわからない機械を3000ドルで買わされるのはもったいない」(商店の店員)

今までも、電気メーター、VOD(ビデオ・オン・デマンド)のセットトップボックス、ソーラーパネル、金正日花、温泉の入場券など、国が国民を相手に押し売りをした事例はいくらでもある。

市場で流通する外貨を国庫に吸収するため、担当者が私腹を肥やすためなど、様々な理由が挙げられるが、今回の紙幣消毒器の押し売りについて、その背景は明らかになっていない。

(参考記事:金正恩の「愛のスキーチケット」飢える住民に国が押し売り