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チュチェ(主体)思想塔は、北朝鮮の首都・平壌を流れる大同江(テドンガン)を挟み、金日成広場の対岸に立つ高さ170メートルのタワーだ。故金日成主席の生誕70年を祝うために1982年に建てられたこの塔は花崗岩でできており、赤く輝く烽火のオブジェが先端に付けられている。展望台まではエレベーターで登ることができ、国内外の観光客が訪れる観光名所だ。

今月22日の旧正月、塔の周辺の広場と公園には多くの市民が集ったが、様々な非社会主義行為(社会主義にそぐわない風紀の乱れ)が見られるとして、当局が取り締まりに乗り出した。

平壌のデイリーNK内部情報筋によると、市民は、酒や食べ物を大同江ビール屋やレストランで買い込み、チュチェ思想塔の周辺で飲めや歌えやの大騒ぎ。酔っ払って喧嘩になったり、ゴミをポイ捨てしたりと、無秩序な状態となった。

これに対して、朝鮮労働党の東大院(トンデウォン)区域委員会(区域党)は、地域の女盟(朝鮮社会主義女性同盟)や大学生を動員して、臨時の糾察隊(取り締まり班)を立ち上げ、パトロールをさせ、一連の非社会主義行為の取り締まりに当たらせることにした。

区域党は糾察隊に命じ、防疫規定や社会主義生活風潮を破り、身勝手な行動をする者から平壌市民証(IDカード)を没収させている。また安全部(警察署)に通報すると同時に、職場や学校にも通知して厳しい処分を求め、「より文化的に朝鮮式社会主義の品位に合った旧正月を過ごそう」と呼びかけた。

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当局は、飲酒して酔っぱらって騒ぐことを「スルプン」、直訳して「酒風」と呼び、好ましからざる非社会主義行為として、度々取り締まっている。また、厳しい食糧難の中で、飲酒そのものがコメや麦の無駄遣いと考えているようだ。

さらには、酔っ払った末に公然と体制批判を行い逮捕される「舌禍」も少なからず報告されている。ただ、娯楽の少ない北朝鮮のこと。人々は、いかに取り締まりが厳しかろうとも、何かにつけて酒を飲んで歌って踊って大騒ぎするのだ。

(参考記事:酒に酔い「禁じられたひと言」で逮捕された北朝鮮の秘密警察

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今回の取り締まりに、市民からは不満の声が上がっている。お祭り騒ぎに水を差されたからではない。

「よりによって旧正月には(料理などで)忙しく、家に必ずいてもらわなければ困る女性を動員してパトロールをさせるなんて呆れ返る」(市民)

4割もの市民が充分な食べ物が得られず、飢餓状態にあると伝えられる平壌だが、市当局は旧正月を控え、10日分の食糧を配給するように指示した。それほどの食糧難の中でも、旧正月ばかりは食べて飲んで憂さ晴らししたいのだろう。

(参考記事:北朝鮮「首都市民の4割が飢餓状態」の衝撃情報