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北朝鮮のお国柄として「手柄は上司、責任は部下」というものがある。何らかの課題があれば、部下に丸投げして、成功すれば金正恩総書記と朝鮮労働党のおかげ、失敗すれば部下に責任をなすりつけるというものだ。

北朝鮮で深刻な食糧問題の解決もその過程にある。国民の食糧調達の責任は政府にあるが、地方に丸投げしてしまったのだ。達成できなければクビが飛ぶことになりかねない。

そんな中で、北東部の咸鏡北道(ハムギョンブクト)は、非常にいい方法を生み出した。現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

(参考記事:朝鮮戦争「老兵」への配慮も国民に丸投げする北朝鮮

咸鏡北道当局は、今月22日の旧正月を控え、孤児院にあたる中等学院、愛育院など国が直接ケアすべき施設の食糧問題を解決するために、穀倉地帯を擁する平安南道(ピョンアンナムド)と協力し、プロジェクトにトンジュ(金主、ニューリッチ)を参加させることにした。

具体的には、平安南道の平原(ピョンウォン)、粛川(スクチョン)、文徳(ムンドク)など、「十二三千里平野」と呼ばれる穀倉地帯からうるち米ともち米を取り寄せて、その半分を地元産の干し魚と交換して平安南道に送り、残りの半分をトンジュに現金で売り払い、トンジュには受け取ったコメの2割を中等学院、愛育院に送らせるという形だ。

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本来は、コメと干し魚の完全なバーター(物々交換)で取り引きを成立させようとしたが、干し魚が不足しているため、トンジュを参加させた上で、干し魚と現金を半分ずつにして平安南道に支払う形にしたのだ。

これに加わったのは清津(チョンジン)の5人のトンジュで、彼ら大きなトラック3台にコメを満載して地元に戻ってきた。

政府は、穀物の民間人による販売を禁じ、国営の国家食糧販売所でのみ販売する計画を進めている。そのため清津市民の中には「コメを売っても本当にいいのか」と訝しがる人もいたが、「個人ではなく咸鏡北道がやっている事業なので法的に問題ない」とトンジュが答えると、コメは飛ぶように売れて1時間も経たずにトラックはすっからかんになったという。

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(参考記事:「市場でコメ売るな」命令にあの手この手で抵抗する北朝鮮商人

これにより、清津の消費者は食糧難から救われた。またコメを買った清津市民の中には、一部を市場で転売して人もおり、現地での食糧の流通も改善した。

今回の成功を受けてか、咸鏡北道当局は来月にも同様の取り引きを行うとトンジュに予告している。今度は、別の穀倉地帯である黄海道(ファンヘド)からコメを取り寄せる予定だ。

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北朝鮮当局は、なし崩し的に進んできた市場経済化に歯止めをかけようと、かつてのような国家主導の計画経済に戻し、市場経済はあくまでも補完的役割に留めようと目論んでいるようだが、民間の力を借りなければ様々な事業が進まないのが北朝鮮の現状だ。

(参考記事:北朝鮮「上級国民ニュータウン」に浮足立つニューリッチ