ゼロコロナ政策で事実上の鎖国を行ってきた北朝鮮だが、その門戸が再び開かれようとしている。当局は恵山(ヘサン)や元汀里(ウォンジョンリ)の税関の設備を、コロナ検疫に対応した新しいものにアップグレードする作業を進めている。
これはもちろん正式な輸入の再開に向けた動きだが、密輸で生計を立てていた人々や、脱北者から北朝鮮に残してきた家族への仕送りを届ける送金ブローカー業を営んでいた人の間でも、期待が高まっている。国境が開かれれば、どこかに「穴」が生じるだろうとの見込みからだ。
(参考記事:北朝鮮「コロナ対策」貿易停止を緩和か…消毒施設の新設認可)だが、恵山では最近になって、密輸には欠かせない中国キャリアの携帯電話があまり通じなくなっている。両江道(リャンガンド)保衛局(秘密警察)の電波探知局が、今月12日から中国の携帯電話の電波を遮断する妨害電波を発信する新たな機器の稼働を始めたからだと、道内のデイリーNK内部情報筋は理由を説明した。
ある送金ブローカーはデイリーNKの取材に、「今月14日、中国の某所に置いてある現金を受け取るため(中国に)電話しようとしたが、つながらずに失敗した」と述べた。「脱北者から入金があった」という音声メッセージを中国から受け取り、脱北者家族に先に現金を手渡し、後から中国から現金を受け取る手はずだったのだが、このままでは受け取れずに終わってしまうのではないかと焦っているとのことだ。
別の同業者も同様で、新型機器の導入を知らない人々は、SIMカードがダメになったのではないかと思い、新しいものを探し回っている。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面北朝鮮は以前にも国境沿いの地域で、中国の携帯電話の電波妨害を行ったことがあるが、中国からの強い抗議を受け、取りやめている。恵山は、中国吉林省長白朝鮮族自治県と鴨緑江を挟んで向かい合い、川幅は50メートルもないため、対岸でも著しい電波障害が発生したのだ。
そこで、国内から中国に向けて発信される携帯電波を探知して摘発する方向に一本化したのだ。それでも中国側からクレームが入るのは明らかなのに、妨害電波発信を再開したのは、本格的な貿易再開に向けて、統制システムの点検に乗り出したのではないかとの見方が示されているが、詳細は不明だ。
(参考記事:中朝携帯攻防戦…北朝鮮の妨害電波に対抗して中国が基地局建設へ)
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面市民の間では新しい電波妨害の機器が導入されたとの噂が広がり、不満がさらに高まっている。
「飢えと寒さに震えている文字通りの生き地獄なのに、そちら(の解消)には関心を持たず、機械の購入にはカネを惜しまない(当局の)やり方に市民は憤っている」(情報筋)
また、電波妨害がいつまで続くかも市民の関心事だ。まもなく恵山税関が再開されるのに、中国との通話ができなければ、商売に悪影響が出るからだ。