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北朝鮮で今年8月7日に開かれた最高人民会議常任委員会第14期第21回全員会議では、複数の法案が審議・採択された。そのうちの一つに、「手続秩序違反行為防止法」がある。

翌日付の国営朝鮮中央通信は、同法について次のように説明している。

経済管理と社会の全般で手続きの手順を合理化し、機関、企業、団体と公民がそれを義務的に順守するようにするなど、手続秩序を強化する上で提起される法的要求が手続秩序違反行為防止法に反映されている。

同法の全容は明らかになっておらず、これだけでは具体的に何を意味しているのかはわからない。ワイロや横流しなどの取り締まりに関する法律ではないかとの見方がなされていたが、咸鏡北道(ハムギョンブクト)ののデイリーNK内部情報筋が、同法の適用事例を紹介した。

中央は最近、「経済管理と社会全般における手続きが、法が求める水準に達しておらず、依然として違法行為が現れていることと関連し、順法会議を開くことについて」という指示を、各地方に下した。

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その指示に基づき、咸鏡北道当局は今月5日、会議を開催した。その場では、法採択から数ヶ月経って、道内の単位(機関、企業所などの職場)で、国が定めた手続きがいかに守られているのか、法採択によりいかなる変化が起きたのかについて評価が行われた。

評価は、5ヶ所の単位の責任者や副責任者が討論を行う形で行われたが、咸鏡北道が海に面していることから発生する、根深い問題について批判がなされた。

北朝鮮で漁船が漁に出るには、出漁許可証を所持していなければならず、同許可証は毎回取得しなければならない。密漁や密輸、そして脱北を防ぐための措置だが、海岸地域の機関や企業所からは、許可証の取得手続きにおいて、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」のころから、贈収賄などの違法行為が蔓延しているとの批判の声が上がった。

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(参考記事:「家族単位の脱北」に頭を抱える北朝鮮当局

このほかにも、安全部(警察署)が市や郡の境界線を越えての移動に必要な旅行証(国内用パスポート)の発行において、当然のようにワイロを要求しているとの批判も出た。

(参考記事:親の死に目に会うにもワイロが必要な北朝鮮の「コロナ対策」

会議ではさらに、工場における生産品の販売手続きの秩序、ガソリン供給の秩序など、社会全般の秩序と原則が有名無実化し、タバコやカネなどのワイロやコネによって支配されているという批判もなされた。販売担当者が、生産品やガソリンを、国が定めたところに納品するのではなく、市場に横流ししたり、特定の単位に優先的に供給したりしていることを批判したものだ。

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一例を挙げると、電気は軍や工場に優先供給されることになっていて、民家は後回しにされ頻繁に停電になる。しかし配電担当者にワイロをつかませれば、自分の家だけに電気を横流ししてもらえるのだ。

(参考記事:常に電力がひっ迫する北朝鮮、解決方法はワイロで電気横流し

力のない企業所や、カネもコネもない庶民は「国の政策が間違っているからだ」と不平不満を口にし、社会全般に反感が生まれるとの分析もなされた。

会議では、数十年間続いてきた道内における不正行為をなくし、各単位が法を遵守してこそ、遵法精神が生まれるとして、違反者に対しては断固たる処罰を行うと「宣戦布告」した。

(参考記事:北朝鮮版「不正腐敗との闘い」の致命的な盲点

北朝鮮ではこのような「宣戦布告」が毎年のように繰り返されているが、しばらくは効果があっても、取り締まりの手がゆるめばあっという間に元通りになる。現実離れした薄給では生きて行けず、各自が持つ許認可権や地位を利用してワイロを要求しなければ生きていけない現実が解消しない限り、根本的に問題が解消することはないだろう。