北朝鮮当局が脱北防止に全力を上げている中、大勢が一度に国境の川を越えて脱北を試みる事件が起きた。国境の監視がゆるくなる年末年始のタイミングを狙ったものと思われる。

現地のデイリーNK内部情報筋によると、慈江道(チャガンド)の中江(チュンガン)郡に住んでいた家族、親戚と知人の18人が今年の元旦に、東隣の両江道(リャンガンド)から国境の川を渡り中国に逃げ込もうとした。10人は成功したが、8人は失敗し国境警備隊に逮捕された。逮捕された人々には過酷な運命が待ち構えている。

(参考記事:金正日命令で「健康な人も廃人に」北朝鮮刑務所の実態

両江道保衛局(秘密警察)は、スパイ担当部署の反探課の逮捕班を中国に派遣し、10人の行方を追っている。中国の公安当局の黙認なしではできないことだが、今のところ逮捕されたとの情報はない。

(参考記事:北朝鮮「秘密警察」が中国で暗躍…脱北幹部の逮捕に躍起

また、報告を受けた北朝鮮政府は、18人という大量脱北事件を重く見て、人民保安省(警察庁)監察局の人員を現地に派遣し、逮捕者のみならず、国境警備隊や現地の捜査機関とグルになっている可能性も含めて取り調べにあたっている。

一方、年末には南浦(ナムポ)市保安部の幹部一家が行方不明になったと、米政府系ラジオ・フリー・アジア(RFA)の情報筋が伝えた。人民保安省に報告され、絶対に逮捕せよとの指示が下された。

人民保安省は、一家が中国に逃亡するものと見て、国境に接した新義州(シニジュ)、龍川(リョンチョン)一体に南浦市の保衛部(秘密警察)、保安部の要員を国境警備隊とともに派遣し、捜索に当たらせている。

また、地域一帯には指名手配写真が貼り出され、「祖国を裏切り脱北しようとするこの者どもを発見すれば、すぐに携帯電話で通報せよ」との布告も下され、漁船の出港も全面的に禁止された。

南浦は外国船が出入りする大きな港があるが、あえてそこを避けて、親戚の結婚式に出るという口実で、国境地域に移動したものと思われる。

別の情報筋によると、新義州から遠く離れた両江道(リャンガンド)でも逮捕作戦が行われ、恵山(ヘサン)の駅前や各地域の洞事務所(末端の行政機関)にも手配書が貼り出されている。

捜査当局は「脱北を手助けした者は反逆者として処断する」と警告を発するにとどまらず、夜中に市内の住宅に抜き打ちで家宅捜索を行うなど、一家を探し出すのに血眼になっているが、それが市民の反発を買っている。

「西海(黄海)の輸出港として有名な南浦の保安部の幹部なら、(ワイロなどで得た)外貨を多く持っているはずだ。国境警備隊の幹部に巨額のドルを掴ませて緻密に計画を練っていたことだろう。姿を消して数日経ったのだから、すでに中国を経て第3国に行っているかもしれないのに、なぜ住民を痛めつけるのか」(現地の別の情報筋)

事件発生から1ヶ月近く経っているが、一家が逮捕されたとの情報は伝わっていない。

(参考記事:密輸失敗の責任を負わされた北朝鮮の下級役人が脱北

このように脱北事件が相次いでいるが、脱北者の数そのものは減少傾向にある。韓国政府の発表によると、2019年に韓国に入国した脱北者の数は1047人で、大量脱北が始まってまもない2001年の1043人とほぼ同数まで減っている。頂点に達した2009年の2914人のほぼ3分の1だ。

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