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新型コロナウイルスのワクチンを接種したことを証明するワクチンパスポート。深刻な打撃を受けた観光業、飲食業の復活に向けて、ヨーロッパを中心に導入が進められ、日本でも今月下旬から導入される予定だ。今のところ国内での使用は想定されておらず、海外渡航時に提示するためのものだ。

しかし、プライバシー侵害や非接種者への差別などの懸念から、米国のように導入を見送る例もあり、国ごとに対応は分かれている。

一方、コロナ前から国内移動が制限されていた北朝鮮では、コロナ対策で移動がより一層厳しく統制されるようになった。やむを得ない事情で移動する場合には当局発行の書類が必要だが、その取得を巡る問題について、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じている。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)清津(チョンジン)市の情報筋は、かつては市や郡の境界線を越えるのに旅行証(国内用パスポート)があれば可能だったが、今では移動ができなくなっていると伝えた。今月からは旅行証に加えて、健康確認証の持参が必要となるという。

これは、市内の区域ごとに設置されているコロナ防疫指揮部を訪れ、行き先の正確な住所、移動の理由、滞在期間などを記した申請書を出し、一次審査を得て、発熱、咳、呼吸困難など健康上の問題はないか、健康診断を受けてようやく発行されることになっている。

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だが情報筋によると、実際に発行してもらえた人はごく少ないという。たとえ移動の正当な理由があったとしても、指揮部はあれこれ理由を並べ立てて、発行しようとしないというのだ。

(参考記事:移動の自由のない北朝鮮、国民の移動をさらに制限

発行しようとしない理由はただ一つ。ワイロをせびるためだ。どうしても移動しなければならない人の足元を見て、100元(約1720円)以上のワイロを要求するという。

あらゆる権限がカネに化けるのが今の北朝鮮だ。少し前までは、市や郡、道の境界線上にある哨所(チェックポイント)の周辺にはブローカーがたむろし、彼らにいくばくかの手間賃を手渡せば問題なく通過できた。また、哨所に定期的にワイロを上納しているタクシーを利用すれば、ほぼフリーパスで通過できたが、コロナのせいで、そのような移動もできなくなってしまったのだろう。

(参考記事:北朝鮮の「検問所」が「料金所」に変身した裏事情

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両江道(リャンガンド)の情報筋の伝えた現地の事情も、咸鏡北道と同様の状況だ。「父危篤」との連絡を受け、故郷に急いで戻ろうとした人が、急な知らせに精神的ショックを受け、数日にわたり食欲がなかったことをもって「健康に異常あり」とされ、健康確認証の発行を拒否されたという。情報筋は言及していないが、この人はおそらくワイロを渡すだけの経済的余裕がなかったのだろう。

もし書類なしで移動して摘発されれば、国家と人民の安全に大きな危機をもたらした重大犯罪者扱いされ、労働鍛錬刑(懲役刑)に処されることとなる。

情報筋は、彼は結局父親のもとに行けなかったと伝えているが、死に目に会えなかったということだろう。この噂が広がり、市民は防疫当局に対して怒りの視線を向けるようになったという。

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当局は、昨年から今年春にかけて、恵山に対して、コロナ対策として封鎖令(ロックダウン)を乱発し、外出そのものを禁じた。多くの人が経済的困窮に陥り、ロックダウン期間中の食糧を確保できなかった人を中心に餓死する人も発生するなど、防疫当局に対する市民の恨みは相当なものだろう。

(参考記事:「餓死者が続出する」地元の反対を押し切り北朝鮮国境都市に封鎖令