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北朝鮮の国営メディアに、昨年6月から急に頻繁に登場するようになったワードがある。「乳製品」だ。

金正恩総書記は、昨年6月の朝鮮労働党中央委員会第8期第3回総会の3日目会議で、育児環境の大切さを強調し、次のように述べている。

金正恩総書記は、子どもの成長、発育において託児所、幼稚園の時期が最も重要な年齢期であると述べ、国家的負担で全国の子どもに乳製品をはじめ栄養食品を供給することを党の政策に樹立することに言及し、その実行のための具体的な課題と方途を提起した。

(参考記事:「対話にも対決にも備えよ」金正恩氏、党総会で強調

また、今年2月の最高人民会議(国会に相当)では、子どもに乳製品など栄養食品を無償で配給するなど、立派な育児条件を保障する育児法が採択された。

事情通によれば、その背景には「北朝鮮の若者の体格の貧弱さと体力不足がある」とされる。

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「1990年代後半の大飢饉『苦難の行軍』の前後に生まれた若者の多くは、子どもの頃にまともに食事にありつけなかったため、体格が小さくて体力もなく、きつい現場仕事に耐えられないと言われている。また、育児環境の悪化が少子化の一因とも思われることから、積極的な育児支援策を取り、元気な子どもを産み、軍事分野でも産業分野でも、充分な働きができる戦士を育てられる環境にしたいのだろう」

(参考記事:北朝鮮でも深刻な若者の晩婚化と非婚化、そして少子化

それに基づき、各地では乳製品の生産が活発化し、5歳未満の子どもには牛乳が配られるようになったが、品質に難があるようだ。平壌のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

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平壌市内の大城(テソン)区域で今月初頭、5歳未満の子どもとその親10人が、腹痛、下痢、嘔吐の症状を見せ、病院に搬送される騒ぎが起きた。共通点は、洞事務所(末端の行政機関)から配給された乳製品を口にしていたことだ。

問題の乳製品だが、搾乳後の保管、輸送の過程で、一切冷蔵されていなかったことが判明しており、それによる食中毒と見られている。日本でも、学校給食に出された牛乳による集団食中毒が発生し、2000年には1万人を超える被害者を出した、雪印集団食中毒事件も起きている。

このような食中毒を防ぐには、殺菌と冷蔵が欠かせないが、北朝鮮では慢性的な電力不足によって停電が続き、平壌ですら24時間の電力供給が行われていない。その上、そもそも冷蔵設備がないところも多い。件の洞事務所にも冷蔵庫はなく、工場から届けられたらすぐに配給するようになっている。

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ただ、冷蔵トラックの台数も足りておらず、洞事務所にやってくるのは週1回。結局、1週間分を洞事務所で保管することになり、傷んでしまうことが多いという。受け取った牛乳はすぐに飲まなければならず、そのせいで子どもだけでなく、親まで食中毒の被害に遭ってしまった。

「子どもたちに乳製品を供給するのも重要な事業だが、冷蔵庫もなく電気も来ないのに、どうやって新鮮な乳製品を提供できるのか。冷蔵庫なしに乳製品を供給だけ増やせば、こんな事故が起き続けるだろう」(情報筋)

(参考記事:北朝鮮の一部都市で1カ月以上も停電続く