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長年にわたって続いている北朝鮮の電力難。以前よりは幾分マシになったと伝えられているが、依然として長期間の停電が起こることもしばしばある。その解決策として提示されたのが、中小型水力発電所だ。

(参考記事:北朝鮮の一部都市で1カ月以上も停電続く

咸鏡北道(ハムギョンブクト)清津(チョンジン)市の企業所幹部は、 米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に、当局が電力問題の解決と地域発展などを云々しながら、中小型水量発電所を建設せよと言っていると伝えた。

地方当局は、会議のたびに道内の各地域の機関、大規模な企業所に対して、中小型水量発電所の建設計画案を提出せよと要求。そのために必要な装備と資材は最大限提供すると説明している。しかし機関や企業所の幹部は、それが嘘八百だと知っているため、市内で建設すると名乗り出た機関や企業所は今のところないとのことだ。

故金正日総書記は1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」のころ、電力難解消のために、「水の流れるところすべてに中小型水力発電所を建設せよ」との指示を下した。それに基づき、全国的に4000もの水力発電所が作られた。しかし、その結果は惨憺たるものだった。

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「河川管理をきちんとしていないため、水が枯れてしまったところも多く、梅雨の洪水でダムの壁が崩れてしまったところもあれば、発電設備の老朽化と故障で発電が全くできず、廃墟になったところがほとんどだ」(幹部)

だが、「遺訓政治」と国是とする北朝鮮は、たとえ間違っていると結果が判明したとしても、金正恩総書記ですらそれをひっくり返すのは容易なことではなく、無駄に資源が使われてしまうのだ。

首都・平壌郊外の平安南道(ピョンアンナムド)でも、朝鮮労働党平安南道委員会(道党)が中心となって、中小型水力発電所の建設を進めている。

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現地のデイリーNK内部情報筋によると、道党は、道内の徳川(トクチョン)市が工業、地理の面から重要な位置にあることから、中小型水力発電所の建設を以前から構想しており、道党挙げての事業として進めている。

徳川には、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の最精鋭部隊の一つ、第11軍団(暴風軍団)の指揮部や、勝利自動車総合工場、炭鉱など重要施設が集中しているが、電力が足りていない。来年からは、国から供給される電気が30%しか保障されないことになっており、来年の生産計画を達成するためには、発電所の建設が欠かせないということだ。

各機関および企業所は、人員を選抜して突撃隊(半強制の建設ボランティア)を結成したが、それでも労働力が足りないため、道党は10月末に、党を挙げて事業を推進するとの布置(布告)を出し、突撃隊を追加募集している。動員された人はまともに食事が与えられないまま、重労働に苦しみ、現場の指揮官は人手不足で工事が進まないことからもどかしい思いをしているとのことだ。

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市民の間からは、「以前にも大量に建設した中小型水力発電所がすべて無用の長物とかしたのに、また大々的に建設すると主張している」と、その成果に懐疑的な声が上がっている。

咸鏡南道(ハムギョンナムド)の端川(タンチョン)市の住民は、RFAの取材に、2017年に始まった端川発電所の建設が未だに終わっておらず、現在でも工事に動員されているが、それに加えて中小型水力発電所の建設が始まれば、動員や支援の金品の徴発で苦しめられると嘆いた。

このような中小型水力発電所の建設は、30年も前に失敗したプロジェクトだが、忘れられたころに再び建設指示が出され、庶民を苦しめている。国が別途に進めているソーラーパネルの導入推進の方がより効果的と思われるが、資材の多くを輸入に頼らざるを得ず、貿易の正常化が遅れている現状で、推進は難しいのだろう。

(参考記事:金正恩氏が進める小型水力発電所建設に住民から不満