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昨年から本格的に行われるようになった北朝鮮の「嘆願事業」。国家経済計画の達成に重要だが、労働力が不足している農村や炭鉱に、都市部の若者が嘆願して向かうというものだ。もちろん、「嘆願」とは言うものの、実際は地域別に人数の割当がある強制だ。

万民が平等な社会であることになっている北朝鮮だが、「嘆願事業」という貧乏くじを引かされるのは、社会的に立場の弱い人々だ。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

咸鏡南道(ハムギョンナムド)咸興(ハムン)の情報筋は、朝鮮労働党が望むところに若者が自主的に向かうことを「奨励する」事業が2年目に突入したと伝えている。以前にも同様の事業が行われたことがあったが、この2年で地域別に7〜8回行われる異例の事態となっている。労働力不足がいかに深刻かを示している。

その一番のターゲットになっているのは、10代の孤児を収容する中等学院の生徒だ。卒業したばかりの7〜80人の生徒のほとんどが、辛く苦しい職場に送り込まれる。孤児は、労災事故で死亡したとしても、遺族がいないため、補償問題などが起きない。当局にとっては都合のいい存在なのだ。

(参考記事:コチェビ出身の労働者ら「見殺し」…北朝鮮の鉄道建設現場で土砂崩れ

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今月は、道内の各地域から選ばれた若者100人が、白頭山(ペクトゥサン)英雄青年発電所、洗浦(セポ)地区畜産基地、咸興青年山羊牧場に送り込まれた。「党が望む辛く苦しい部門に喜んで向かう」という嘆願書に強制的に署名させられ、自主的に向かったという形を取る。

「そんな状況で署名を拒否できる人がどこにいる」(情報筋)

それでも行きたくないと抵抗する若者もいるにはいるが、「署名したではないか」「党の意思に背くのか」などと圧力をかけられ、黙らせられるという。

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咸鏡北道(ハムギョンブクト)会寧(フェリョン)の情報筋は、中央から各工場、企業所に対して、嘆願者のリストを提出せよと毎日のように催促していると伝えた。これらの職場は昨年、まともに出勤しない者や厄介者をまとめて送り出したのだが、もはや誠実で大切な働き手の若者を送り出すしかない状況に追いやられているとのことだ。

その中でも、親戚に幹部のいない若者、コネのない一般労働者の子どもなどが選ばれている。カネとコネが物を言う北朝鮮では、貧乏人が割りを食うのだ。

運悪く送り込まれた若者も、様々な手を尽くして逃げ出そうとする。さもなくば、戸籍が農村戸籍に変えられてしまい、一生を貧しい地域に縛り付けられてしまうからだ。

(参考記事:送り込まれた若者が次々に逃げ出す北朝鮮農村「嘆願」事業の現実

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そもそも、農村や炭鉱で労働力不足が起きるのは、社会の見通しの暗さなどから子どもを持とうとしない少子化、豊かな生活を求めてそれら地域から逃げ出して都会へ向かう現象など、貧困が根本的な原因だ。北朝鮮お得意の強引なやり方でなんとかしようとしても、解決は難しいだろう。

(参考記事:移動の自由がない北朝鮮でも進む都市化…農村の生産力に打撃