人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

北朝鮮北部の両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)で、国営商店で働いていた人々が次々に店を去る事態となっている。詳細を、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

まず、北朝鮮の国営商店の現状について説明しておこう。

恵山には他の北朝鮮の都市同様に、多数の国営商店が存在するが、1990年代の大飢饉「苦難の行軍」の頃に開店休業状態に陥ってしまった。地元の国営工場の8割が稼働中止に追い込まれ、商品が供給されなくなったからだ。

そこで、商人に店舗の一部を貸し与えて商品を販売させ、利益の一部を家賃として徴収し、国庫に納めていた。その額は地域によって異なるが、1500元(約3万400円)から2000元(約4万600円)程度だ。

こうすることによって、国営商店は国から課された国家計画課題(販売ノルマ)を達成し、商人は利益を得て、消費者の利便性も向上するという「三方よし」のシステムが自然の流れで出来上がっていった。同様のケースは、原材料がなくて設備を遊ばせている国営工場でも見られる。

(参考記事:北朝鮮、国営工場の一部を個人製造業者にレンタル

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

ところが、コロナ禍で状況が一変した。商品のほとんどが中国からの輸入品だったが、国境封鎖と貿易停止で商品が入荷しなくなり、国営商店も商人も赤字を抱えるようになった。そんな中、今月11日に中央から次のような指示が下された。

「11月1日から国営商店を通じて得られる収益はすべて国庫に納めよ」

品物を売っても利益を得られないことになった商人たちは、一斉に商品を引き上げ始めた。一方で市当局は、商品を持ち出せないように、安全員(警察官)まで動員して妨害している。

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

「(朝鮮労働)党の方針なのだから、出ていくなら商品を置いていけ」という当局に対し、巨額の投資をした商人は「個人の財産を保護すべき国が、個人を相手に強盗を働いている」と抗議する事態となっている。

(参考記事:「この犬野郎、殺すなら殺せ」頑強に抵抗した北朝鮮女性たち

個人に貸し与えられていた国営商店の運営権を回収する今回の措置。その意図は不明だが、なし崩し的に進んだ市場経済化を押し留め、従来の計画経済に戻し、経済の主導権を国の手に取り戻そうとする流れの一環である可能性が考えられる。

(参考記事:開始早々から不安と不満が渦巻く北朝鮮の「国営商店倍増計画」

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

しかし、国が商品を調達できる保証はなく、また以前のように開店休業状態に戻るだけだろう。これでは誰の得にもならない。