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1990年代からなし崩し的に進んだ北朝鮮の市場経済化。それを押し留めようとする国の政策はことごとく失敗している。2009年の貨幣改革(デノミネーション)はその最たるものだ。私経済に流れ込んだ資金を無効化し、経済の主導権を国の手に取り戻そうとしたものの、国中が大混乱に陥った。

金正恩総書記は、父・金正日総書記のそんな統治を見て育ったせいか、最近に至るまで市場に対する統制をかけようとしなかったが、ここに来て政策に変化が現れている。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えたのは、国営商店の増設と市場の縮小という政府方針だ。

「国家登録商店を増やし国が主導する経営体系に向かう」という政府方針に従って、清津(チョンジン)市は、モデルケースとして国内有数の巨大市場、水南(スナム)市場の近隣に国営商店「水南第1収買商店」をオープン、「委託販売人民奉仕経営体系」の導入成功の事例として宣伝する行事を準備している。

(参考記事:北朝鮮、新たな商店のオープン指示に懐疑と疑問の声

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この「委託販売人民奉仕経営体系」とは、店名の「収買」、つまり買い取りが表しているように、商品を持っている人が自ら市場で販売するのではなく、国営商店が買い取って、小売りをするというものだ。

道党(朝鮮労働党咸鏡北道委員会)と道人民委員会(道庁)は、これについて次のように説明しているという。

「市場は、首領様(金日成主席)の時代から、農民が農産品だけを売る市場となっていがが、(1990年代後半の大飢饉の)苦難の行軍が始まって、国家奉仕体系が崩壊し、腐敗堕落した資本主義的市場になった」

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説明にある通り、農民市場とは、農民が個人用の畑で取れた余剰農産品を販売するもので、国家主導の配給システムを補完するものに過ぎなかった。しかし配給システムの崩壊以降、農民市場が母体となって、現在あるような大規模な市場へと発展した。当局が推し進めようとしているのは、市場を1980年代以前の農民市場に戻そうとするもののようだ。

これは、今年1月の朝鮮労働党第8回大会で示された、今後5年以内にすべての工業製品、食料品、電化製品、衣服など人民消費品(生活必需品)を国家経営の商店で安く販売する体系を立ち上げるという計画に基づいたものだ。

このような政策に対しては、多くの商人が不満と不安を示している。商品を国営商店が買い取るとのとだが、需要と供給から定まる市場の物価より安値での販売を強いられるのではないかということだ。商人の多くは零細商人で、儲けのわずかな差でも生活に響く。

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「政府の収買商店政策を知った住民のほとんどが、政府が現在は(商品の売り渡しを)強制する立場になれないが、市場をなくして国営商店をどんどん増やそうとする勢いで進められているとしていると考え、力のない庶民の暮らしが苦しくなるだろうと見ている」(情報筋)

ただ、以前からこの手の国営商店は存在し、商品を売り渡す人もいたが、ほとんどが密輸された品物で、市場と変わりない価格で販売しており、道党の構想通りに行くか商人たちは疑問を示しているとのことだ。

また、国営商店とは言っても、実際の経営者は政府当局ではなく、カネとコネのあるトンジュ(金主、新興富裕層)や幹部の家族だ。個人の商売をだめにして、ごく一部の層が利益を独占する結果になりかねないとの見方もある。

経済の主導権を国の手に取り戻し、物価を安定させ、税収を安定させると同時に、庶民の支持を取り付けたいというのが、国の思惑と思われる。だが、北朝鮮国民の多くが消費者であると同時に販売者であることを看過しているようだ。

販売者が国営商店に品物を売らなければ、商店は成り立たず、だからといって売り渡すことを強制すれば、庶民が苦しむ結果をもたらし、商店も儲からない。一部の層だけが儲け、貧富の差が拡大すればむしろ国民の不満は高まるだろう。

貨幣改革の時には、商人に国定価格での販売を強制した結果、売り惜しみが続出し、極度の物資不足に陥った。焦った当局は、見せしめとして一部の商人を銃殺にするなどしたが、全く効果はなかった。北朝鮮は、そんな前轍を踏もうとしているのだろうか。

(参考記事:北朝鮮、市場統制計画を撤回…世論の反発を意識