北朝鮮に「尋常ならざる空気」飢餓に苦しみ始めた都市住民

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世界で唯一、計画経済を採用している北朝鮮では、毎年の農業収穫量も、国家計画委員会によって定められる。前年の収穫量をもとにして、収穫量の課題(ノルマ)を課す、というものだ。

金正恩総書記は農業第一主義を掲げ、農業生産高の向上を訴えているが、各地から作況が極めて悪いとの情報が伝わってきていた。現在行われている秋の収穫の結果も、散々なようだ。

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「農業部門に尋常ならざる空気が流れている」と述べた平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋は、首都・平壌郊外にある平城(ピョンソン)市の栢松里(ペクソンリ)協同農場で、収穫量が国家計画の半分にも満たなかったと伝えた。

通常、収穫期を迎えると穀物価格が下がり、食糧事情が好転するものだが、今年は価格が下がらず、農民はもちろん都市住民も飢餓に苦しんでいる。

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この状況に、当局はこんな対応を取った。

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当局は、平安南道の各市・郡の朝鮮労働党委員会、人民委員会(市役所)の農村経営委員会のイルクン(幹部)を呼び集め、収穫量の再判定を始めた。先月初めに行われたトウモロコシの第1回収穫量判定で、各農場が収穫量を過少報告していたことが問題となったためだ。つまり、上述の栢松里の事例も、虚偽による過少報告だと疑っているのだ。

農場の収穫物は、国が国定価格で買い取り、その結果に応じて農民に再分配される形になっているが、国定価格が極めて安い上に、再分配もまともになされない。決められたとおりにやれば、農民全員が餓死することになる。それを避けるため、農場は収穫量を過少報告し、一部を市場に流して現金化し、食糧を購入して農民に配給していた。このやり方が槍玉に挙げられることになったのだ。

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朝鮮労働党平安南道委員会の会議室で行われた会議では、農場に対して検閲(監査)を行う件について討議された。情報筋はこれを「収穫量減少の責任を農場関係者になすりつけようとする意図」だと説明した。

下に責任を押し付けて生き残ろうとするのは、北朝鮮の権力機構の常だが、それで農業と食糧の問題が解決するわけではもちろんない。そもそも、需要の6割程度しか供給できていない状況から脱皮して、食糧自給率をできるだけ高めようというのが農業第一主義の目的だが、農業に必要な肥料や営農資材も不足し、防災インフラも整備されていない。

北朝鮮が固執する集団農業そのものが、他の国は非効率だととっくの昔に捨て去ったものだ。北朝鮮も一部でインテンシブ制度を導入するなどの試みを行ってはいるが、徹底されていない。

(参考記事:毎年凶作の北朝鮮農業、何が問題なのか?