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親孝行とは、子どもが親を大切にするという、儒教の説く徳目の一つだ。封建社会で支配階級が勤労人民大衆を無条件で従わせる思想として、儒教を排除してきた北朝鮮だが、「徳の高い最高指導者が人民を率い、人民は忠と礼を持って最高指導者に尽くす」などと言った形で、儒教的価値観が色濃く残っている。

北朝鮮では昔、「ごはん工場」に代表されるような、家事労働の社会化などの取り組みが行われていたが、経済の困窮に伴い、その責任が国から国民個人に戻されてしまった。

理想通りなら、国が担うはずの老人のケアも、個人に課されている。最近、北朝鮮当局が行った「親不孝者調査」はその現れと言えよう。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋は、朝鮮労働党の成川(ソンチョン)郡委員会は今月初めから、一人暮らしの戦争老兵(朝鮮戦争参戦者)の生活実態に関する調査を行っていると伝えた。

先月27日の「戦勝節」(祖国解放戦争勝利記念日)の後、戦争老兵を党が責任を持って面倒を見て、社会的に優遇せよとの指示が中央から下されたが、その実行のための事業の一環だという。

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その結果、清川江(チョンチョンガン)機械工場旋盤職場の部門党書記、織物工場の細胞書記3人など合計4人が、戦争老兵である親とは別居していることが判明し、翌日に更迭された。

親の面倒を見ず、放置した容疑で摘発された4人に対しては、6ヶ月間の革命化措置(下放)が下された。その間、一般の工場労働者として働き、親と同居して孝行すれば、再び党書記として復職させるという。

永久的な出党(朝鮮労働党からの除名)や更迭にせず、条件付きの処分にしたのは、当の戦争老兵からの反発が予想されたためだと、情報筋は説明した。

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平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋も、朝鮮労働党定州(チョンジュ)市委員会が、地域の人民班長(町内会長)を通じて、戦争老兵の親と別居していたり、ネグレクトしていたりする子どもに対する実態調査に入ったと伝えた。

その結果、90歳の両親と同居はしているが、生活苦で1日3食の食事を出せないケース、痴呆症で寝たきりになっている親をほったらかしにして協同農場に出勤しているケースなどが発覚し、五星里(オソンリ)協同農場の農民ら5人が、見せしめとして摘発された。

5人は、党委員会に数日間毎日呼び出され、なぜ親不孝をしたのか自己批判書を書かされ、党が大切にする戦争老兵の親に孝行を尽くせと思想教養(思想教育)を受けさせられた。

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摘発された農民は「自分の親に温かい食事を出したくなくて、出さないわけではない」「戦争老兵の不幸な老後が、国の責任ではなく子どもの罪になるのか。国は責任を持って老兵の世話をせず、子どもに押し付けるのか」と反発している。

(参考記事:朝鮮戦争「老兵」への配慮も国民に丸投げする北朝鮮

経済難の続く北朝鮮では、子どもの重荷になりたくないと自ら家を出る親もいる。当局は、そんな老人を施設に収容しているが、食べさせるものがなく、家に送り返しても、子どもには面倒を見る余裕がない。思想ばかりを強調し、実質的な支援を行わない当局の責任は重い。

(参考記事:北朝鮮に現代の「姥捨山」…自ら家を出る老人も