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朝鮮には「高麗葬」という言葉がある。実際に行われていたのかは定かではないが、日本の姥捨山のように、口減らしなどの理由で老人を山奥に置き去りにするというものだ。高麗時代(918年〜1392年)の風習だというが、21世紀の北朝鮮でも同じような状況が繰り広げられている。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

咸鏡南道(ハムギョンナムド)咸興(ハムン)の情報筋は、市内の沙浦(サポ)区域で先月29日から、安全部(警察署)の巡察隊が、朝鮮労働党の沙浦区域委員会の指示に基づき、区域内の鉄道駅、市場、道端などでさまよう老人を車に乗せて、養老院(老人ホーム)に移送する作業を行っていると伝えた。

これは、2月1日の旧正月を控え、街をさまよう「老人放浪者」を各地方の党組織が責任を持って根絶せよとの中央の指示に基づくものだ。だからといって、区域の党委員会に老人の面倒を見続ける財源はないため、養老院送りにしたというものだ。しかし、養老院でも彼らに与える食べ物がない有様だという。

養老院の責任者は、区域の党委員会に押し付けられた老人をひとまずは引き取り、施設内の施設に収容した上で、元はどこに住んでいたのか、家族はいないのかを調査、もし見つかれば送り返している。

しかし、親を送り返された子どもも困窮し、面倒を見る余裕はないようだ。

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「コロナで子どもたちも食糧が不足し、極限の状況に追い込まれているのに、年老いた親が帰ってきても喜べない」(情報筋)

北朝鮮の老人は、本来なら年金を受け取り、何不自由なく余生を過ごせるようになっているはずなのだが、年金は現在の物価水準に合わない雀の涙ほどの額で、食糧配給も行われていない。そのため子どもから厄介者扱いされて追い出されたり、自ら家を出たりするのだという。

(参考記事:「子どもの駄賃」レベルの年金も中断、北朝鮮経済の深刻さ

平安南道(ピョンアンナムド)殷山(ウンサン)郡の情報筋は、朝鮮労働党殷山郡委員会が、旧正月を迎え、中央の指示に基づき、街をさまよう老人放浪者を収容していると伝えた。ただ、彼らの面倒を見るほどの財政的余裕はまったくないのが現状だ。

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コロナ鎖国以降、このような老人が急増していると情報筋は伝えた。

「生活苦に追いやられた住民は、倫理と道徳的価値観が破壊され、年老いた親を追い出したり、虐待したりする現象が増えた。老人たちは自ら家を出て、放浪者に追いやられている」(情報筋)

(参考記事:【北朝鮮国民インタビュー】コロナ苦境で口減らし、家を出る老人たち

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老人に対する虐待が社会問題となり、当局はいくら生活が苦しくても、自分を生んで育ててくれた親を世話せずに虐待する者は、党と国家に対する反革命分子となりうる」として、非社会主義現象(風紀の乱れ)と見なし、思想教養事業(思想教育)を強化しているとのことだ。

だが、根本の生活苦が解消しない限りは、いくら思想教育をしたところで、同様の問題はいくらでも再発するだろう。

(参考記事:詐欺被害の老母を追い払い死なせた北朝鮮党幹部に庶民が激怒