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北朝鮮には「集団配置」という制度がある。これは、除隊軍人(兵役を終えた兵士)が、炭鉱、山奥の協同農場など誰も行きたがらないところに集団で送り込むというものだ。非常に評判の悪いこの制度だが、改めて実施せよとの命令が下されたと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

平安北道(ピョンアンブクト)の軍内部の情報筋によると、国防省は中央の指示に基づき、集団農場に除隊軍人を集団配置するための指揮組を立ち上げ、今年と来年に除隊する軍人を選び、全国の共同農場に送り込む事業を進めている。

また、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)総政治局は、各部隊の政治部に委任し、農村に送り込む人員の選抜などの準備に万全を期すように指示した。

今回の集団配置の背景について、情報筋は次のように説明している。

「今回、除隊軍人を協同農場に集中配置することになった背景には、農村人力の高齢化が加速し、若い働き手が農村を抜け出し、他の仕事に従事することで、農作業に支障が生じている」
「中央は毎回、農業の重要性を強調しているが、ほとんどの農場は深刻な働き手不足に陥っており、慌てた当局は、除隊軍人を集団配置せよと指示を下した」

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職業選択の自由、居住の自由が制限されている北朝鮮だが、農村の終わりの見えない貧困から抜け出すために、様々な手段を使って都会に向かう人が増えている。当局はしばしば、そのような人を農村に追い返す対策を取っているが、あまり効果がないようだ。また、少子化の進行も著しいと言われている。その穴埋めを、除隊軍人にさせようというものだ。

(参考記事:移動の自由がない北朝鮮でも進む都市化…農村の生産力に打撃

対象者だが、まずは農村に縁故のある者として、部隊ごとに割り当てられた人員を満たせない場合、都市出身者も対象に含めている。除隊を控えた兵士の間では、自分が対象に選ばれるのではないかと不安が広がっているという。

総政治局は、優遇措置として、対象となった者を11月中旬までに朝鮮労働党に入党させることを指示した。

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これは、対象者を地域に縛り付けるという意味もあるが、昨年3月、咸鏡南道(ハムギョンナムド)のある部隊で、集団配置に伴う除隊繰り上げで入党できなくなったことに恨みを抱いた兵士が、人事担当者の家に放火、20人が焼死する大惨事が起きたことも影響している可能性がある。

(参考記事:「俺の人生を返せ」怒り狂った北朝鮮兵士がガソリンを手に向かった先は…

ただ、以前に比べて党員の社会的地位が低下していることに加え、一生を貧しい農村に縛り付けられるのに入党しても意味がないとの反応が出ているとのことだ。

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咸鏡北道(ハムギョンブクト)の別の軍内部情報筋は、総政治局から各部隊に、集団配置対象者を選ぶ作業を行い、対象者は農村を強化する革新的役割を担うだけあり、思想的にきちんと武装させよとの指示が下ったと伝えた。しかし、選ばれた人々の士気はダダ下がりとなっているのに、思想的に武装させてどうするのかと反問した。

また、来年に除隊を控えた軍人の士気も低下しており、「除隊すれば自動的に党に入れるのだから」と、露骨に仕事をサボる者も続出しているとのことだ。

この集団配置だが、うまく行っているとは言い難い。金正日総書記は1999年、両江道(リャンガンド)の大紅湍(テホンダン)に世界的なジャガイモ農場を作るとして、1000人の除隊軍人を送り込んだが、貧しい極寒の辺境の地での生活に耐えかねて、多くが逃げ出したと言われている。

別の情報筋によると、2014年には200人、2015年には450人、2016年には300人を送り込んだが、ほとんどが逃げてしまったという。

(参考記事:北朝鮮で深刻な人手不足、頼みの「除隊軍人」も次々失踪

2015年には、海外への出稼ぎに行かせるとの触れ込みで、除隊を控えた兵士を集め、両江道の白岩(ペガム)のジャガイモ農場に集団配置するという詐欺的行為が行われた。話が違うと離婚する夫婦が続出し、家庭不和の末に自ら命を断つ人が現れるなど、大きな騒ぎとなった。

(参考記事:北朝鮮、海外派遣のはずが山奥の農場へ…騙された軍人たち、怒り心頭