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北朝鮮は最近、兵役期間を男性は9〜10年から7〜8年に、女性は6〜7年から5年に短縮した。それでも、兵役を実施している全世界の90余りの国の中で、服務期間が飛び抜けて長い状況に変わりはない。

兵役短縮の目的は、経済再建に必要な労働力を確保するためと伝えられているが、国内各地で様々な反発が起きている。先日、兵力不足を理由に短縮に反対した朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の隊列補充局の参謀長が更迭され、家族もろとも炭鉱に追放される処分を受けたが、兵役短縮への反発は現場レベルでも起きている。

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デイリーNK内部情報筋によると、軍の隊列補充局は最近、各軍団に対し、在籍が7〜8年間を超えた兵士たちを除隊させよとの指示を下した。この方針は、咸鏡南道(ハムギョンナムド)の咸興(ハムン)に駐屯する第7軍団にも伝えられた。同軍団は隷下の一部部隊が、コロナ対策の国境警備人員増強のために中国との国境地帯に派遣され、様々なトラブルを起こしている。

(参考記事:北朝鮮軍で相次ぎ発生する「いじめ報復殺人」

軍団直属の警備中隊のオ分隊長も、今回の除隊対象者リストに名前が載ったひとりだ。食糧不足や劣悪な衛生状態、行動の制限など兵役中の兵士には様々な不利益があるだけに、繰り上げ除隊を喜んでいるかと思いきや、当の本人は極めて不満に思っていた。

兵役中に、北朝鮮のメインストリームへのパスポートとも言うべき、朝鮮労働党への入党推薦が得られることになっているが、タダというわけにはいかない。

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入党を巡っては、ワイロが飛び交ったり、推薦書と引き換えに性上納を強いたりなどの問題が指摘されている。オ分隊長も、3年後に除隊するまでに入党するために、軍団の党員登録課長にコメや現金など、様々なワイロを送り続けてきたのだった。

(参考記事:北朝鮮軍を蝕む女性兵士への「マダラス」と呼ばれる性上納強要

「来年には入党の割り当てがあるはず」という党員登録課長の言葉に、オ分隊長は期待を膨らませ、訓練や青年同盟(金日成・金正日主義青年同盟)の活動に熱心に取り組んでいた。

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そんな最中に下された除隊命令。懐を痛めつつ納めてきたワイロも、入党も何もかもがパーになってしまったのだ。いや、受けるダメージはそれ以上のものだ。

「兵役中に入党できなかったり、候補生(見習い党員)にすらなれなかったら、社会では『兵役をまともに勤め上げられなかった』と見なされ、半人前扱いされる空気がある」(情報筋)

そのため、一般的には軍入隊から5年経ったころから除隊後の人生設計を考え、入党資格を与える権限を持つ担当者や幹部にワイロを欠かさず、覚えを良くして、入党の手続きが円滑に進むようにしておくものだという。そんな努力を一瞬でチャラにされてしまったオ分隊長が平常心でいられるわけがない。

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今月5日、党員登録課長の自宅を訪れ「緊急で入党の割り当てが欲しい。それが無理なら除隊を遅らせてくれ」との要求を突きつけた。しかし、課長は「割り当ては私のポケットに入っているわけではない」と対応。

一度は引き下がったオ分隊長だが、どうしても怒りが収まらず、今度はガソリンの入ったボトルを持って課長の家を再度訪ねた。そして、怒りに任せてガソリンを撒き散らしたのだ。

これが室内にあった変圧器に引火し、爆発。6世帯が住む2階建ての住宅全体が火に包まれ、各家庭にあった変圧器も次々に爆発した。この火事でオ分隊長、党員登録課長とその妻、娘2人、隣人など20人が焼死する大惨事となった。

一部地域では、消防署が機能不全に陥っていると伝えられているが、今回の火災で適切な消火活動がなされたかは明らかになっていない。

(参考記事:北朝鮮のガス爆発、追い込まれた火元の家の妻が取った最期の選択

事件発生の報告を受けた朝鮮人民軍保衛局(旧称保衛司令部)の担当者が急遽平壌から現場に派遣された。その後の調査で、オ分隊長が政治指導課での個人面談で、党員登録係長に対する不満を吐露していたことが確認され、怨恨による犯行との結論が下された。

オ分隊長以外にも、同様の不満を持っている除隊対象者が多いことに危険を感じた軍当局は、同軍団の除隊対象者を集めて講習を実施。除隊対象者の怒りをなだめるため、こんな言葉が伝えられた。

「君たちは、兵役をまともに勤め上げられず、入党ができないのではない。忠実に行っていた。しかし、党から急に除隊させよとの方針が下されたのだ。君たちが除隊後に、優先的に入党できるように評定書(勤務評価書類)を書いて渡す用意がある」

これを受けて、軍総政治局青年事業部は各部隊の青年事業部に対し、繰り上げ除隊対象者の評定書に「軍服務を頑張った」を書き込むよう指示を下した。

また総政治局宣伝部は、今回の事件を受けて、繰り上げ除隊する兵士を「党の信任を受けて社会に踏み出す人々」と持ち上げた上で、「銃とハンマーと鎌に持ち替えて、人民経済の前哨戦での先鋒隊、突撃隊になろう」という内容の政治講演資料を、全国各部隊の政治部、宣伝部に下し、除隊対象者に対する集中教養事業(思想教育)を行わせている。各軍団、師団はその受講者から除隊対象を選ぶように、計画を変更した。

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