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北朝鮮は、今月から本格的な「田植え戦闘」の開始に伴い、一部穀倉地帯に1ヶ月分の食糧を配給した。深刻な食糧難の中でも、現場の士気を高め、農業生産量を確保する狙いがあるものと思われる。

平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋が伝えたところによると、配給が行われたのは道内の江西(カンソ)、平原(ピョンウォン)、黄海北道の谷山(コクサン)、新渓(シンゲ)、遂安(スアン)にまたがる平野地帯「ミルボル」、黄海南道(ファンヘナムド)の載寧(チェリョン)を中心とした「ナムリボル」だ。

配給は「田植え戦闘」の始まった今月4日から10日にかけて行われたが、具体的に配給の指示があったわけではなく、「田植え戦闘期間中、住民に仕事ばかりさせず、食の問題も保障せよ」との指示に基づき、行われたものだという。

深刻な食糧難で、各地の農場では、食べるものがなく、仕事に出てこない農民が続出しているのが現状。機械化が遅れ、人の手に頼らざるを得ない北朝鮮農業の現実を考えると、人手不足は生産量の減少に直結する。

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また、今回配給が行われた地域は、首都・平壌に比較的近い地域で、平壌市民に配給する「首都米」の確保が、市民の忠誠心の維持、体制の安定につながるという判断があったものと思われる。

配給用の食糧の確保は、国からの支援がなく、地方政府に丸投げされることになっているので、今回も平安南道など各自治体がなんとかしてかき集めたのだろう。

(参考記事:キムチ用の「野菜確保」を巡り大騒ぎの北朝鮮

ちなみに配給の量だが、平安南道では、農作業に動員される工場、企業所、人民班(町内会)に大人1人あたり400グラム、子どもは100グラムで、黄海道では、大人600グラム、子ども250グラムをそれぞれ1ヶ月分となっている。無償配給ではなく、市場での価格の半分で購入する形だ。そのカネがないほどの極貧の人には、人民班で現金を集めて支援が行われた。

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実は、1ヶ月分の食糧が配給されるという話は以前から流れていたものの、「根拠のない噂だ」として信じようとしない人が多かったという。だが実際に配給されたことで、量は少なくとも、皆が満面の笑みをうかべて喜んでいるとのことだ。

ただ、今回の対象地域内でも、すべての人に配給されたわけではないようで、受け取れなかった人からは「自分たちも動員されて田植えをやらされているのに、われわれは連れ子か(冷遇の意)」と悲嘆に暮れている。

配給の話は、遅かれ早かれ全国に広がり、一部地域だけの特別扱いに対する不満が続出するだろう。

(参考記事:【北朝鮮国民インタビュー】食糧の尽きた地方で続出する餓死者