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1970年代までの韓国では、毎年11月になると家の前に2つのモノが山のように積まれるものだった。一つはオンドル(床暖房)に使う練炭、もう一つはキムチ用の白菜だ。当時は、春までの4〜5ヶ月間を食べ繋ぐためのキムチを、白菜100玉以上使って、一家はもちろん町内総出で漬け込むものだった。これを「キムジャン」という。

そんなキムジャンの風景も大きく変わりつつある。世論調査機関のギャロップコリアの調査によると、「キムチを家で漬ける」と答えた人は、1994年には95%に達したが、2018年には64%まで減少。また、「必ずキムチがなければならない」と答えた人も、2003年の85%から2018年には55%まで減少した。

調査はキムジャンの時に漬けるキムチの量は問うていないが、100玉単位で漬ける家庭はもはや珍しくなってしまった。

一方の北朝鮮は、50〜60年前の韓国のキムジャンを彷彿とさせる光景が、毎年繰り広げられている。ある脱北者は次のように語った。

「北朝鮮の両江道(リャンガンド)に住んでいた我が家では、白菜350キロ、キャベツ100キロ、大根150キロのキムチを漬け、ニンニク、ネギ、キュウリの漬物を別に作っていた」

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(参考記事:北朝鮮、北部では早くも「キムチ漬け込み戦闘」開始

キムジャンに使う野菜は、国から機関、工場、企業所を通じて人々に配給されていたが、今年は状況が違うようだ。

両江道のデイリーNK内部情報筋は、「キムジャン用の野菜を自力更生で無条件自給自足せよ」との中央の方針が、各道に下されたと伝えた。道党(朝鮮労働党両江道委員会)は13日、道内の機関、企業所などの責任者が参加する総会を開き、キムジャン用の野菜を道が保障せよとの方針を伝達、手段を総動員して住民の衣食住に問題を道が自主的に解決せよとの党の要求を貫徹しなければならないと強調した。

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道党はまた、コメも重要だが、半年間の食糧であるキムジャン用野菜も非常に重要だとして、住民が腹をすかせないように野菜供給の先頭に立つべきとも述べた。道党は、道内の野菜栽培状況を把握すると同時に、肥料の供給についても確認し、キムジャン用野菜が不足しないように、肥料散布の管理をきちんと行うよう指示した。

さらに道党は、機関、企業所が量の少ない国からの配給に頼らず、副業地(企業所などが管理する畑)を管理して、自主的にキムジャン用野菜を保障すべきとも強調した。それに加えて、国家配給用の野菜を栽培する農場の仕事を、各機関、企業所が手分けして管理すべきとも言い渡した。

野菜の確保を巡って、上を下への大騒ぎとなっているわけだが、野菜不足は当局のコロナ対策がもたらしたものだ。

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「コロナ前は、多くの野菜を中国から密輸してキムジャン用野菜や調味料を解決していたが、コロナで一切の輸入がストップした状況で、道内のイルクン(幹部)はキムジャン問題をいかに解決するかで頭を痛めている」(情報筋)

長期化する貿易停止、密輸への取り締まりで物資の不足は深刻化する一方だ。

(参考記事:長期化する非社会主義取り締まりで疲弊の度合いを深める北朝鮮国境地域

話を聞いた地元住民は、党がいかに幹部らを締め上げても白菜や大根の収穫量が急に増えるわけではなく、野菜価格の高騰が予想されており、苦しい暮らしに疲れたとの反応を示しているとのことだ。

他の道では、野菜の道外流出を防ぐために取り締まりを行っており、農耕可能な土地の少ない両江道が割りを食っている形だ。ミサイル実験で多額の予算が費やされる裏側で、一般国民は野菜の確保で東奔西走を強いられているのだ。