北朝鮮の人々は、市場の営業時間の延長や短縮に、非常に敏感に反応する。営業時間が長くなればその分儲けが増え、短くなれば儲けが減るからだ。当然のことながら、時間が短くなったり、閉鎖されたりすれば強い不満が出る。
昨年2月、平安北道(ピョンアンブクト)当局は、コロナ対策を理由に市場を閉鎖したが、地元の反発を受けて、わずか2日で撤回する出来事が起きている。世論を意識した当局は、最近になって市場の営業時間を延長している。
(参考記事:「コロナより餓死が怖い」北朝鮮国民、市場封鎖に猛反発)
咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、会寧(フェリョン)市内の市場の営業時間が、先月までは午後2時から5時までだったのが、今月1日から午後7時まで2時間延長されたと伝えた。
市場の営業時間はもともと、夏季と冬季に分けられていて、夏季には長く、冬季には短い。昨年は夏季でも午後3時から7時までの4時間だったのが、今年からは5時間に延ばされた。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面市民からは喜びの声が上がっている。
「(今までは)市場利用時間が短すぎて、不便なことが一つや二つではなかった」
「今年は太陽節(4月15日の金日成主席の生誕記念日)の整周年(5や10で割り切れる年)だからか、市場の利用時間を少しでも伸ばして、祝日の準備に助けになりそうだ」(情報筋)
なお、市場の営業時間は地域によって異なるようで、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の情報筋は、両江道(リャンガンド)で、午後3時から6時までだった市場の営業時間が、先月初旬から午前9時〜午後6時へと大幅に延長されたと伝えている。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面いずれも、市場の営業時間延長が、政権に対する世論をよくすることを知った上での措置と思われる。
(参考記事:穀物販売権の独占を目指すも後退を強いられた北朝鮮)一方、イナゴ商人(露天商)に対する取り締まりは相変わらずだ。
イナゴ商人とは、市場使用料(ショバ代)を払えるほどの儲けがないため、市場周辺や住宅街の路上で露天を開いている非常に零細な商人のこと。イナゴ商人は民族最大の名節(祝日)である太陽節の雰囲気にそぐわず、社会主義のイメージを乱すというのが取り締まりの理由だ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面会寧市の南門洞(ナムムンドン)の路地では今月初旬、商品販売禁止区域で餅を売ったとの理由で、安全員(警察官)に連行される人が出た。大目に見てほしいと頼んだが、特別取締期間だからダメだと有無を言わさず連行、結局罰金1万北朝鮮ウォン(約180円)を支払ってようやく釈放されたとのことだ。
一部からは「貧しいイナゴ商人の懐からカネを奪って、太陽節の行事の準備をしようというのではないか」という不満混じりの噂が聞こえるという。また、安全員は公式の市場で商売をしている人から罰金を取り立てることは少ないが、イナゴ商人からは取締名目でタバコ1箱など細々とワイロを取り立てており、「そのために取り締まりに熱心なのではないか」との声も聞こえると情報筋は伝えた。
(参考記事:「この犬野郎、殺すなら殺せ」頑強に抵抗した北朝鮮女性たち)