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北朝鮮が今月30日、大々的な大赦(恩赦)を行うことはデイリーNKでも既報のとおりだ。既に釈放、減刑対象者の選抜作業は完了しているとのことだが、仮に釈放されたとしても、すぐに帰宅できるわけではなさそうだ。

それは「嘆願事業」のせいだ。

(参考記事:北朝鮮の大規模な恩赦、デイリーNKは昨年末に報道

デイリーNKの内部情報筋は、今回の大赦令と関連して社会安全省(警察庁)教化局の4つの指針が下されたと伝えた。

真っ先に挙げられたのは、30日に釈放される者が炭鉱、鉱山、農村など社会主義建設の難しく辛い部門に「嘆願」するように、思想事業(思想教育)を行なえというものだ。いわゆる「嘆願事業」だ。

もちろん「嘆願」とは言葉ばかりで、誰も行きたがらない炭鉱や農村など生活環境のよくないところに強制的に送り込まれるものだ。これまでは都市部の若者を対象に行ってきたが、その対象をさらに拡大するのは、今までの嘆願事業がさほどうまく行っていないからである可能性が考えられる。

(参考記事:「堆肥戦闘」と「若者の奥地への派遣」から始まる2022年の北朝鮮

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指示は、10年前の太陽節(金日成主席の生誕記念日)を祝うための赦免で、价川(ケチョン)の第1教化所から釈放された男性10人が、朝鮮労働党に対する心の重荷を下ろせないとして、嘆願して平安南道(ピョンアンナムド)順川(スンチョン)の直洞(チクトン)炭鉱に向かい、生産計画(ノルマ)を120〜130%超過達成したという「美談」を例に挙げた。

10人はその後、金正恩総書記に手紙を送り、それに対して親筆(チンピル、金正恩氏の決済署名入り)の手紙を受け取ったとのことだ。直洞炭鉱には、その手紙の一文を刻んだ石碑が立てられ、10人は依然として炭鉱で働き続けているとのことだ。

教化局がこの話を取り上げたのは、第1教化所が積極的に10人を支援して嘆願を促し、そんな党の配慮に応えるための道を開けという意図があると、情報筋は説明した。

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今回の指針を受けて、第1教化所では10年前の事例を元に、嘆願対象者との面談を進めており、平壌市江東(カンドン)郡の第4教化所、咸鏡南道(ハムギョンナムド)咸興(ハムン)の第9教化所でも、同様に面談が進められているとのことだ。

なお教化局は、平壌出身者に対しては、嘆願とは関係なく、全員を辛い部門に送り込めという指針を下している。平壌に住むには特別な許可が必要だが、実刑判決を受けて教化所送りになった者は平壌に戻る資格がないということだろう。

彼らは、縁故の有無とは関係なく地方の炭鉱や農村に送られ、5年間は旅行証明証(国内移動に必要なパスポート)を発行するなとの指示も付け加えられたとのことだ。これに対して平壌出身者は、実刑、地方追放、奥地への配属という三重処罰だと不満を訴えているという。

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一方、平壌以外の出身者に対して教化局は、元々住んでいた地域の党委員会や安全部(警察署)に身柄を引き渡し、更生させよとの指針を下している。

最後に教化局は、管理所(政治犯収容所)からの出所者に対しても炭鉱、農村に送り込めという方針を下した。国境地域や交通の要衝などを除く、奥地に送り込み、同じ管理所出身者が固まらないように、別々の地域に送り込めというものだ。管理所の収容者は今回の赦免からは除外されると伝えられていたが、必ずしもそういうわけではないようだ。

今回の嘆願事業だが、その背景には炭鉱、農村における深刻な労働力不足がある。これら地域のあまりの生活環境の悪さ、貧困から一生抜け出せないことから、逃げ出す人が相次いでいることと、深刻な少子化が関係していると思われる。

(参考記事:毎年凶作の北朝鮮農業、何が問題なのか?