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冬の北朝鮮で増加するものの一つが「一酸化炭素中毒」だ。

北朝鮮では暖房用として練炭を使う人が最も多く、マンションですら供給が不安定で高価な電気やガス暖房ではなく、練炭暖房を使えるように改造する人が少なくない。

実際、どれくらいの事故が起きているのか。北朝鮮での詳細は不明だが、練炭を使っていた1980年代以前の韓国では、毎年数百人が一酸化炭素中毒で亡くなっていた。それを考えると、現在の北朝鮮でも同じような状況にあると思われる。

(参考記事:北朝鮮「サウナ」で事故、客ら11人が犠牲に

そんな悲劇を防ぐために、各人民班(町内会)では、夜に家々を回り、玄関を開けて中毒になっていないかを確認する活動が行われてきた。そんな面倒を解決してくれる新しい機械が導入されたのだ。平壌のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

(参考記事:「焦げ臭い匂い取り締まり班」の活動を妨害する知人の犯罪

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最近、各洞事務所(末端の行政組織)は市民に対して、国内で開発したというリモートガス警報器の普及活動を行っている。Bluetoothで携帯電話と接続して、一酸化炭素が一定の濃度になると警報音が鳴るという仕組みだと、情報筋は説明している。

これは無料で配給されるものではなく、工場まで購入に出向いた場合は20ドル(約2270円)、人民班で買う場合にはマージンが上乗せされ27ドル(約3070円)で買わなければならない。ただでさえコロナ鎖国の経済苦境に喘ぐ北朝鮮の人々にとって、非常に負担になる価格ではあるが、かなりの人気となっている。未来科学者通り、9.9節通りなど都心部の裕福な人々の住むマンションでは、人民班で注文を集めて共同購入している。

ちなみにこの警報機を開発したのは未来科学技術交流社という企業で、生産は軍需産業を司る第2経済委員会傘下の工場で行われている。北朝鮮で最も予算をふんだんに使えるはずの軍需産業ですら、このような形で外貨を稼がなければならない状況に陥っているということだ。稼ぎ出した外貨の一部が、国庫に納められることは言うまでもない。

(参考記事:北朝鮮で一酸化炭素中毒を防ぐ発明品が続々

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以前、当局が電気メーターを強制的に買わせようとしたときには、市民からかなりの反発を食らったが、今回のガス警報器がむしろ人気を集めているのは、生命の安全に直結しているからだろう。

(参考記事:「使っただけ電気料金を払え」を抗議で撤回させた北朝鮮国民

設置場所は天井が推奨されているが、一酸化炭素が空気より重いことから、床に置いた方が効果的だと考える人もいるようだ。

こうしたガス警報器人気だが、これはあくまでも平壌だけのお話。平壌より貧しい地方の人々の手には到底届かず、「絵に描いた餅」に過ぎない。

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両江道(リャンガンド)の内部情報筋は、コロナ鎖国により経済事情がさらに苦しくなった現地の人々の間では、警報機を買うカネがあるのなら、トウモロコシを買って食べた方がマシという意見が多かったと伝えた。平壌と比べて、密閉度の高い新築マンションの数が限られているという事情もあるのだろう。