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かつての日本の教育現場では、「髪の乱れは心の乱れ」などと称して、生徒個々人の服装、ヘアスタイルに事細かい規定を作り、それに従うことを強制していた。拒否すれば体罰を振るわれるなど、生徒の人権などないに等しかった。

それを国家的にやっているのが北朝鮮だ。国民のファッション、ヘアスタイルなどを思想と結びつけて、「社会主義の理想」とやらからかけ離れたものを「非社会主義現象」だとして取り締まる。

ところが、そんな理想を体現しているはずの金正恩総書記の真似をすると、逆に取り締まられてしまうという逆説的な状況が起きている。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

(参考記事:ジーンズ禁止に北朝鮮国民が反発「ズボンと思想に関係が?」

首都・平壌郊外の流通拠点で、流行に敏感な平城(ピョンソン)の若い男性の間では最近、レザーコートが流行している。現地の情報筋の話では、流行のきっかけは、金正恩氏が2019年にレザーコートを着て朝鮮中央テレビに登場したことだ。

(参考記事:激しい拷問に耐え続けた北朝鮮「レザーの女王」の壮絶な姿

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また、今年1月の朝鮮労働党第8回大会では、金正恩氏のみならず、妹である金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党副部長、趙甬元(チョ・ヨンウォン)党書記、玄松月(ヒョン・ソンウォル)党宣伝扇動部副部長まで、レザーコートを着てテレビに登場した。これを受け、レザーコートは男性のみならず、力のある女性のシンボルとみなされるようになった。

それを商機と見た商人たちは今年9月、海外貿易を行っている貿易会社の幹部に、合成レザーの生地の輸入を依頼し、レザーコートに仕立て上げて売り出した。

ところが、数日前から平城駅前と周辺の広場で安全員(警察官)が、レザーコートを着ている人を捕まえて、没収するようになったのだ。被害にあった若い男性たちが「自分でカネを払って市場で買ったものなのに、なぜ没収するのか」と安全員に抗議する事態となった。

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それに対して安全員は「最高尊厳(金正恩氏)のレザーコートを真似したものを着るのは、最高尊厳の権威に便乗しようという不純な行動だ」とし、着用者を取り締まれとする党の指示があったと明かしたという。

かつては、金正恩氏のヘアスタイル「覇気ヘア」を強制していたというのに、今になって「真似するな」と言い出したのだ。

(参考記事:北朝鮮「男は黙って覇気ヘア」逆らえば「無慈悲にバリカン虎刈り」

平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋は、2000年代から韓流の拡散に伴い、韓国の俳優チャン・ドンゴンが着ているレザージャケットが流行し、中国から輸入したものや、国内の個人業者が製造したものが売られていると伝えた。

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ところが、最近になって金正恩氏が着ているレザーコートに流行が移りつつあるという。これは、業者が金正恩氏のものをそっくりそのまま真似して作ったもので、生地は、トンジュ(金主、新興富裕層)が海上密貿易を行っている国営の貿易会社を通じて取り寄せたものだ。

コロナ鎖国の中、国民が食糧、生活必需品の不足に喘いでいるというのに、生活に必ずしも必要のない高級生地が中国から大量に輸入されているのだ。

レザーコートが流行し、司法機関は販売者と着用者の取り締まりに乗り出した。取り締まりに遭った人は「レザーコートに不純思想でも入っているのか」と強く反発している。

ちなみにお値段だが、本物のレザーを使った男性用は17万北朝鮮ウォン(約3910円)、女性用は13〜15万北朝鮮ウォン(約2990円〜3450円)、合成レザーを使ったものはそれぞれ8万北朝鮮ウォン(約1840円)、5万北朝鮮ウォン(約1150円)ほどだという。食うや食わずの生活をしている人にはとても手が出ない高級品だ。