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「キムジャン用の野菜を自力更生で無条件自給自足せよ」

そんな命令が北朝鮮政府から各地方政府に下されたのは先月のこと。キムジャンとは、冬の間に食べるキムチを大量に漬け込む習慣のことだが、コロナ鎖国や自然災害による食糧、物資不足の深刻な今の北朝鮮では、野菜の入手が難しくなっている。本来なら国が責任を持って供給すべきところだが、それを地方に丸投げしたのだ。

その結果はと言うと、全く命令どおりにはなっていない。現地の状況を、平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

(参考記事:キムチ用の「野菜確保」を巡り大騒ぎの北朝鮮

首都・平壌の郊外の物流拠点、平城(ピョンソン)市の人民委員会(市役所)は、キムジャンについての調査を行った。キムチは、春が来るまでの半年間にわたって食べる必須の食料と考えられているにもかかわらず、多くの地域で野菜不足により漬けられない家が増加するとの見込みとなった。

情報筋によると、野菜不足はコロナ鎖国のせいだけではない。

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「秋に湿度が高く、ありとあらゆる病虫害が猖獗(しょうけつ)し、白菜、大根への被害が拡散したのが野菜不足の原因」

平城で最大の白菜農場として知られる三花(サムファ)、鳳鶴(ポンハク)の両協同農場では、白菜の葉がフニャフニャになる軟腐病、根にこぶができる根こぶ病が急速に広がったとのことだ。いずれも病原菌に汚染された土壌により生じるもので、後者は大根にも感染する。農薬散布で対処できるが、コロナ鎖国で中国からの輸入がストップしているため、入手は容易でない。

病虫害により収穫は例年の3割減となる。実はこの地域では昨年も野菜不足でキムジャンができなかった家が多かったのだが、今年はさらに増えるものと見られている。

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キムジャンを諦めた人が多く、キムチ作りに欠かせずこの時期には上がるはずのトウガラシの価格が、大暴落しているとの報告もある。

(参考記事:キムチ作り真っ盛りの北朝鮮でトウガラシ価格が大暴落

平城市民の間には、キムチなしでどうやって冬を越せばいいのかわからないと、不安が広がっているが、これと言った対策はないのが実情だ。

(参考記事:「泥炭入りパンを作れ」食糧難の北朝鮮が断末魔の呼びかけ