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北朝鮮経済の足を引っ張っている要因の一つに、インフラの未整備がある。北朝鮮当局は見栄えのするハコモノの建設には熱心だが、経済を下支えするインフラの整備にはあまり興味がなさそうに見える。中でも深刻なのは、慢性的な電力不足だ。

一時は、列車の運行にも重大な支障が生じ、運休や大幅な遅れが多発していた。最近は以前ほどではなくなっていたが、ここに来て再び雲行きが怪しくなりつつある。

(参考記事:北朝鮮で鉄道運行が正常化…「東京ー岡山」の距離を24時間

平安北道のデイリーNK内部情報筋は、最近に入って一般家庭に供給される電気が1日2〜5時間から1〜2時間に減り、周囲の工場では交差生産(時間帯をずらしての操業)に入ったと伝えた。

情報筋によると、このような交差生産は、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」のころを除き、いくら電気が不足していても行われていなかった。しかし、最近では定州(チョンジュ)精錬所、清水(チョンス)化学工場でも電気が供給されず、生産に支障をきたしている。

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精錬所や化学工場、軍需工場は一時的に電気供給が中断すれば、再開まで非常に時間がかかることから、交差生産の対象から除外されていた。北朝鮮の電力難がいかに深刻であるかを示す証左だ。

この地域に主に電力を供給しているのは、水豊(スプン)ダムだ。朝鮮が日本の植民地支配下にあった1943年に完成し、朝鮮戦争で破壊されるも、旧ソ連の援助で復旧、1955年4月に北朝鮮と中国が結んだ「鴨緑江水力発電所に関する協定」で、発電した電気は両国が半分ずつ使うことになっていた。

2018年になって、全量を北朝鮮が使えることとなったが、それにもかかわらず電気の供給時間が短縮されたのは、中国に輸出しているからではないかと情報筋は見ている。

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香港のサウスチャイナ・モーニング・ポストは先月、電力不足に苦しむ中国の、北朝鮮からの電力輸入量は、9月に3万5974メガワット時に達し、昨年同月比で62%増加したと報じている。また情報筋は、水豊ダムの発電量70万キロワット時のうち、半分を中国の輸出に回していたのを、60万キロワット時に増やしたが、一般国民はそのことを知らずにいると伝えている。

(参考記事:北朝鮮の深刻な電力難、中国の支援で緩和か

つまり、北朝鮮は劣悪な自国の電力事情そっちのけで、中国に電気を「飢餓輸出」しているということだ。家庭用の電力だけならまだしも、国家経済発展5カ年計画の達成に欠かせない工場の稼働すら止めてでも、電力を輸出に回すほど、北朝鮮の懐事情が深刻な状態になっていることを示す。

それだけではない。上述の通り深刻な電力不足に苦しんでいる中国が、北朝鮮に電力の販売量増加を強く要求していると情報筋は述べた。北朝鮮は、要求に応じなければ、パイプラインを通じて中国から入ってくる原油を止められかねないという事情もあった。

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ちなみに水豊ダム以外にも、鴨緑江の流域には雲峰(ウンボン)40万キロワット、渭原(ウィウォン)39万キロワット、太平湾(テピョンマン)35万キロワットの水力発電所があるが、これらで発電された電気の行き先について、情報筋は触れていない。また、この地域には中小規模の水力発電所が数多く存在するが、まともに稼働していないのか、足しにはなっていないようだ。

(参考記事:金正恩氏が進める小型水力発電所建設に住民から不満