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韓国統計庁の資料によると、北朝鮮の発電設備容量(2016年)は766万キロワット。しかし、老朽化した配電網のせいで発電量の3割が失われると言われている。そもそも、燃料不足で実際の生産電力は380万キロワットにも満たないと言われている。

供給が需要に追いつかないことで、北朝鮮は極めて深刻な電力難に苦しめられてきたが、そこに変化の兆しが見えてきた。その背景には中国からの手厚い支援があると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じている。

平壌の情報筋によると、6月に入ってから電力難がある程度解消したが、その理由を巡り平壌市民の間では憶測が飛び交っている。「お上(金正恩党委員長)が非核化を宣言し、軍需工業向けの電力を人民生活に回したのではないか」と喜ぶ人もいるが、情報筋は「現実的に不可能」とその憶測を一蹴し、次のような話を切り出した。

「中国の習近平国家主席は今年3月に開かれた中朝首脳会談で、北朝鮮に20万キロワット級の中古発電設備を援助することを約束した」 「中国から10万キロワットの容量の発電設備を複数台取り寄せたからという証言を、貿易部門のイルクン(幹部)から聞いた」

設備の輸送に携わったというこのイルクンは「経済制裁の履行を命じられている中国税関で引っかかることを恐れて、設備は海路で運ばれた。平壌で民生用に使われている」と述べたという。

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6月下旬に平壌火力発電所に中国製の発電機(1基あたり10万キロワット)2基が設置され、平壌市内に絞って電力を24時間供給しているというのだ。

「平壌の1日の電力消費量は50万キロワットなので、今回の設備導入で平壌市内の電力問題は完全に解消するだろう」(情報筋)

中朝国境沿いの新義州(シニジュ)の情報筋は、現地の電力事情が改善したかどうかについて言及しなかったが、中朝両国が協同で管理していた鴨緑江沿いのダムの運営権が北朝鮮側に移譲されたと伝えた。5月7日に大連で開催された2回目の中朝首脳会談で、習近平氏から贈られたものだという。

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3回にわたって行われた中朝首脳会談の場で、中国が北朝鮮に様々な支援を約束したとの話は、北朝鮮ではかなりの範囲で流布されているという。当初は噂に過ぎないと思われていたことが、事実であると裏付ける状況証拠が次々に現れたというのだ。

「60年以上前に作られた中朝水力発電公司という組織が、鴨緑江の水力を利用した太平(テピョン)、水豊(スプン)などの水力発電所を作った。生産された電力は、両国が折半することになっているが、習近平主席が運営権をわが国(北朝鮮)に永久移譲したので、生産された電力をすべて北朝鮮が利用できるようになった」

水豊ダムは、平安北道(ピョンアンブクト)朔州(サクチュ)郡にあり、日本の植民地時代に、満州国政府や朝鮮窒素(現チッソ)により設立された鴨緑江水力発電会社が多額の予算を投入し、鴨緑江に建設した巨大な水力発電所だ。

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朝鮮戦争中に破壊されるも、1958年にはソ連のレニングラード設計院と、中国の労働力、資材の支援を受け、復旧した。その過程の1955年4月に締結された「鴨緑江水力発電所に関する協定」に基づき、発電した電気は両国が半分ずつ使うことになっていた。

かつてはこのダムで、北朝鮮の電力需要の一定以上を賄えていたが、その「成功体験」が同国の電力政策を狂わせてしまった。

朝鮮戦争後の復興が進むにつれ、電力の需要は飛躍的に伸びた。さらに金日成主席は、鉄道の電化事業を進めた。徐々にひっ迫する電力供給を補うために建設に力を入れたのが、水力発電所だった。しかし、朝鮮半島は降雨量が少なく水力発電には適していない。そうこうしているうちに、頼みの水豊ダムは設備の老朽化で発電量が減ってしまった。1990年代までに、頼みの綱の共産圏からの援助も途絶えた。かくして深刻な電力難が北朝鮮を襲った。

当局は1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」のころ、電力難解消のために「水の流れるところすべてに中小型水力発電所を建設せよ」との指示を下した。それに基づき、4000もの水力発電所が作られた。しかし焼け石に水で、全く役にたたかなかった。

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鉄道は、頻繁な停電のため停車を繰り返し、平壌から恵山(ヘサン)までの720キロを約23時間で結ぶはずの列車が、10日以上かかるような事態となってしまった。

それなのに、金正恩氏が推し進めたのはさらなる水力発電所の建設だ。2015年には白頭山(ペクトゥサン)英雄青年発電所、煕川(ヒチョン)9号発電所、2016年には礼城江(レソンガン)4号発電所、2017年には礼城江3号発電所を相次いで完成させた。全発電量に占める水力発電の割合は、1990年の16.9%から2016年には32.3%に達した。

しかし、コストの割には発電量が少なく、北朝鮮お得意の「速度戦」で作ったために、水漏れ事故を起こしたり稼働ができなかったりと、散々な結果をもたらした。

昨今の電力難の緩和は、北朝鮮の政策が実を結んだのではなく、中国の支援によるものだったのだ。