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中国との国境に接した地域で、「社会主義にそぐわない」と当局が考える非社会主義・反社会主義行為の取り締まりを大々的に進めている連合指揮部。取り締まりの厳しさに疲弊感が広がり、留置場は逮捕された人で溢れかえっていると伝えられている。

そんな中、咸鏡北道(ハムギョンブクト)慶源(キョンウォン)郡で、トンジュ(金主、新興富裕層)5人が逮捕された。郡が進めるプロジェクトに積極的に関わっている彼らはなぜ逮捕されたのか。現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

(参考記事:長期化する非社会主義取り締まりで疲弊の度合いを深める北朝鮮国境地域

内閣は先月、「党の雄大な5カ年建設計画(国家経済発展5カ年計画)の残りの4年間で、各道も建設に邁進しなければならない」とし、各地方で住宅建設を進めるように指示した。これを受けて慶源郡は、住宅の建設に取り掛かった。

(参考記事:金正恩の「豪華住宅」建設指示に、庶民は「まず腹いっぱい食わせろ」

建設に必要なセメントを国から受け取ったものの、量が全く足りなかった。そこで郡当局は、いつものようにトンジュからの投資を募ることにした。

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「住宅建設が終われば、投資した金額に応じて3棟以上を与え、費用が回収できるようにする」(郡当局)

住宅建設を行うに当たって、トンジュからの投資を募り、その見返りとして住宅を分譲する手法は北朝鮮で広く使われてきたものだ。トンジュは、受け取った住宅を売却して利益を確保し、当局は「住宅建設をやり遂げた」と成果を示せるというウィンウィンの手法だ。

住宅建設が完成段階にあった先月初め、トンジュにはそれぞれの投資額に応じて3棟から5棟の住宅が与えられたのだが、それを売却する過程で問題が提起され、5人が連合指揮部に逮捕されてしまった。その家族も安全部(警察署)に連行され、取り調べを受けている。

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この住宅建設事業では、完成した平屋に小さな部屋を増築して2棟を建てた扱いにし、入舎証(居住証明書)を発行するなどを手法が使われたのだが、地域住民から「国の住宅がカネ儲けの手段となっている」との声が上がった。また、5人のトンジュが住宅を買おうとする人に高値をふっかけたことで意見の衝突が起きたことも、問題となった。

取り調べを行っている安全局監察課は、「個人が住宅を売買できないのがわが国(北朝鮮)の法」だとし、住宅売買をカネ儲けの手段に利用したのは資本主義の温床で、トンジュらの行為は国の苦しい事情を利用した非社会主義行為だと批判した。

また、5人のうち3人は闇両替商を営み、米ドルや中国人民元の相場の動きに応じて売買を繰り返して儲けたことまで問題視されている。

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一方で逮捕されたトンジュらは、郡当局から投資の呼びかけがあったからそれに応じたもので、住宅も投資の見返りとして受け取ったものだ、非社会主義行為にされるとはひどいなどと訴えているという。

この話を聞いた他のトンジュは、こんな裏切られ方をするのなら誰が国を信じて投資するのかと不安がっている。

郡当局の反応は伝えられていないが、困惑していると思われる。確かに住宅の売買を行うのは違法行為ではあるものの、事業をやり遂げるにはトンジュから投資を募るのがほぼ唯一の方法だ。これが封じられたとなれば、もはや住宅建築は不可能だからだ。

今回の件を通報した住民も、どうせ家が建てられたところで自分のものにならず、皆が苦しい中でトンジュだけが涼しい顔をしていることが面白くなかったのだろうが、今後、住宅建設の建設の費用と称して、事実上の税金を搾り取られる状況に追い込まれることにまでは考えが及ばなかったのだろう。

国は、そんな住民の不満の意識したようで、去年から不動産売買を取り締まり姿勢を見せている。しかし結局は、建設プロジェクトが一向に進まないか、上層部に報告するためだけに建てられ、居住には適さないハリボテが増えるだけだ。まさに「誰得」の取り締まりなのだ。

(参考記事:北朝鮮、不動産売買を取り締まる方針