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北朝鮮の金正恩総書記が、今年1月の朝鮮労働党第8回大会の結語で、反社会主義的・非社会主義的傾向(風紀の乱れ)、権力乱用、不正・腐敗などと並べて犯罪行為だと指摘した「税金外の負担」。

公式の税金制度が廃止されているはずの北朝鮮で、権力機関が様々な名目で法的裏付けのない金品を徴収する行為が相次ぎ、国民の不満が高まっていることを無視できなかったのだろう。実際に取り締まりも行われている。その一例を、両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

恵山市と対岸の中国との間を流れる鴨緑江の堤防は、幅が一定ではなかったのだが、これをきれいに揃える工事が行われた。恵山市人民委員会(市役所)は、各人民班(町内会)に工事の担当区間を割り当てる「度級制」を実施した。

市内の恵花洞(ヘファドン)第14人民班と第57人民班は住民に対して、工事に必要な直径30センチ以上の石30個収めよ、それができなければ現金2万北朝鮮ウォン(約460円)を収めよとを指示した。

人民班、職場、学校を通じて金品の供出を求める行為は広く行われていたが、上述の通り、金正恩氏はこれら行為を禁じる発言を行った。そのことを知っている一部住民は、「党が税金外の負担をさせるなというのにさせている」と、信訴(告発)を行った。

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普段なら、たとえ理不尽な指示であっても地元当局に従わざるを得ないが、おりしも両江道では、反社会主義・非社会主義連合指揮部のグルパが中央から派遣され、取り締まりを行っていた。そのおかげで信訴が可能となったようだ。

取り締まりのあまりの厳しさに、地元住民からは強い不満の声が上がっている。その一方、地元にしがらみのない官僚たちが派遣されたことで、今までなら黙って従うしかなかった地元当局の横暴についても、直接訴えることができるようになったという側面もある。

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実際、情報筋は「最近、非社会主義グルパなど複数の機関が住民の負担を減らそうとしている」と評価している。「住民の税金外の負担を禁止せよというのは、住民の不平、不満に危機を感じ、彼らをなだめようとしているからだ」(情報筋)ということだ。

(参考記事:長期化する非社会主義取り締まりで疲弊の度合いを深める北朝鮮国境地域

グルパは洞事務所(末端の行政機関)と人民班に対する集中的な検閲(監査)を行い、その結果、洞事務長と人民班長2人の合計3人が解任され、労働鍛錬隊(懲役)1カ月の処分が下された。

とりあえずの税金外の負担は避けられた形だが、実のところ、問題は何も解決していない。

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「税金外の負担がなければ、(中央の)当局からの指示を何も執行できない」(情報筋)

中央はあれしろこれしろと指示を下しながら予算配分は行わず、「自力更生せよ」というばかり。ならば、住民から税金外の負担として徴収するしか方法がないのだが、それもできなくなったとなれば、全く身動きが取れなくなってしまうのだ。そんな状況に地元当局の幹部は困惑していると、情報筋は伝えている。

グルパがいなくなれば、すぐに税金外の負担が復活することは火を見るよりも明らかだ。それしか方法がないからだ。グルパが派遣されていない地域では、当たり前のように税金外の負担が徴収されている。

(参考記事:幼子に「地獄の沙汰も金次第」と教え込む北朝鮮の幼稚園