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公式の税金制度が廃止されている北朝鮮。しかし、実際には様々な名目で税金が徴収されている。

金正恩総書記は今年1月の朝鮮労働党第8回大会の結語で、「社会生活の各分野で現れているあらゆる反社会主義的・非社会主義的傾向、権力乱用と官僚主義、不正・腐敗、税金外の負担などあらゆる犯罪行為を断固阻止し、統制しなければならない」と述べたが、「税金外の負担」の表現を使うことで、税金の存在を認める形となった。

(参考記事:金正恩氏の「税金外の負担」禁止令、違反事例相次ぐ

その税金の一つが「市場管理費」――通称「チャンセ」だ。市場の売台(ワゴン)を借りて、商売を行う商人が支払うものだ。

北朝鮮最大の市場と言われる、平安南道(ピョンアンナムド)平城(ピョンソン)の玉田(オクチョン)総合市場では、売る品目ごとに市場管理費が定められている。穀物、果物、野菜、雑貨は3000北朝鮮ウォン(約60円)、海産物は4000北朝鮮ウォン(約80円)、家電、衣類は5000北朝鮮ウォン(約100円)だ。

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この額は、コロナ前の2019年5月に値上げされたもので、同年12月まで据え置かれていることが確認されていた。それから1年以上経った今年8月でも、依然として据え置かれていることが、現地のデイリーNK内部情報筋からの情報でわかった。このような据え置きは、他の地域の市場でも行われていると伝えられている。

市場管理費の値下げを求める声が上がっている状況で、値上げを伴う計画を実行するのは不可能だったということだろう。

「市場に来ても物を買う人がおらず、売り上げもないのに、チャンセまで値上げされれば不満が大きくなるだろう。儲からなくなっただけ、チャンセを下げるべきという話も出ている」(情報筋)

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また、市場管理費を徴収する市場管理所の職員の態度も丁寧になったとのことだが、当局は商人の不満の爆発をかなり警戒しているようだ。

(参考記事:制裁不況を「減税」で乗り切る北朝鮮の市場

当局は、市場で販売できる製品の種類を制限し、また細分化して市場管理費を徴収することで、税収を増大させ、現行の統計、経済指標に反映されていない市場活動を詳しく統制、把握する方針だった。しかし世論の反発が大きく、計画は撤回に追いやられた。

(参考記事:北朝鮮、市場統制計画を撤回…世論の反発を意識

なお、穀物に関しては市場での販売を禁じ、国営の国家食糧販売所での販売に一本化し、価格を安定させる計画が実行に移されたが、穀物を販売する商人に課される市場管理費の額が発表されていることが確認されたことからも、「国営米屋計画」がうまく行っていない現状が窺い知れる。

(参考記事:金正恩印の「国営米屋」、開店休業つづき計画挫折か