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「この一年近く、コロナで全世界がうめき声をあげている。貧窮で苦しいが、そういうときこそ平壌市をもっと美しく整え、国際都市の面貌を具えて、社会主義の偶像としての姿を見せつけなければならない」(平壌市の布告)

北朝鮮はコロナ鎖国で経済難が深刻化し、封鎖(ロックダウン)される地域や隔離される人も続出。当局は決して認めようとしないが、各地から感染者や死者発生の情報が伝えられている。

体裁を大事にするお国柄だけあり、国民の生活がどれだけ苦しくても、都市の美観整備が優先される。ショーウィンドウ的な役割を果たしている首都・平壌ならなおさらのことだ。その負担は庶民の肩に重くのしかかる。

(参考記事:新型コロナ「平壌など23人死亡」…金正恩に極秘集計の衝撃情報

命令が下されたのは先月21日。現地のデイリーNK内部情報筋は、平壌市が3月、4月の「衛生月間」を迎えて、マンションの壁の塗り直しなどの美化方針を行うとの布置(布告)を下した。

問題は、費用を住民負担としたことだ。

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洞事務所(末端の行政機関)の指示に基づき、人民班(町内会)は、ペンキと花壇の整備に必要なブロックとレンガ、道路やゴミ捨て場補修に必要なセメントなどの費用として、1世帯あたり8400北朝鮮ウォン(約126円)を徴収している。これは金正恩総書記が禁止したはずの「税金外の負担」に当たるものと言えよう。

金正恩氏は、今年1月に開かれた朝鮮労働党第8回大会で、断固阻止して統制すべき行為として、反社会主義的・非社会主義的傾向(風紀の乱れ、不許可映像の視聴など)、権力乱用、官僚主義、不正・腐敗と合わせて、法的根拠のない金品の徴収を指す「税金外の負担」を挙げている。

金正恩氏がこうした方針を示した背景には、国民の強い不満があるのだろう。しかし、方針表明の直後から、それに反する現象が起きているのだ。

(参考記事:金正恩氏が禁じた「税金外の負担」、強制加入の保険に化けて復活

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国が地方政府に予算配分をしたとしても、元をたどると、地方政府が住民から様々な名目で搾り取った金品だ。税金外の負担を禁止すれば、国も地方政府も税収がなくなり、何もできなくなってしまう。

税金制度を復活すれば良いだけの話だが、遺訓政治を国是とする北朝鮮では、1974年に金日成氏が宣言した税金制度の廃止を真っ向から否定するようなことは、孫の金正恩氏と言えども困難なことだ。体制のあり方そのものに問題の根本があるが故に、小手先の禁止令で解決するような問題ではないのだ。

(参考記事:町内会長に「禁断の発言」をぶつけた北朝鮮女性が処刑の危機

かくして、住民の不満は解消されない。ましてやこの経済難の中だ。不満は以前より大きい。

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「コロナの前までは、マンションの整備費用を負担に感じていなかった市民も、表には出さないが、こんなに暮らしが苦しいときにまで、あえて建物の塗り直しをしなければならないのかと不満を抱え込んでいる」(情報筋)

また、コロナ対策下での費用の徴収も非常に面倒な作業となっている。

当局は人民班の班長に「個人宅に近寄るな」との指示を出しているため、マンションの前に立って、住民が通りかかるタイミングに声をかけてカネを払わせている。懐事情が厳しい住民は、窓から外を見下ろし、人民班長がいないのを確認してから、そそくさと外出しているとのことだ。

こんなことをして細々と費用を徴収しているが、3月1日から開始予定だった整備事業は、資材の確保ができず、いつ始められるか目処が立たない状況だと情報筋は伝えた。