北朝鮮の国境警備隊にとって、脱北の幇助、密輸への関与は重要な「シノギ」だった。国から充分な予算が得られない中、業務を遂行し、隊員の生活を保証するために、また隊員個人は、除隊後の生活設計のために、脱北と密輸に積極的に関わってきた。
ところが、コロナがそんな状況を一変させた。それ以前も取り締まりはあったものの、昨年1月の国境封鎖以来、さらに強化され、国境地域の一般住民はもちろん、国境警備隊関係者も次々に逮捕されている。
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デイリーNK内部情報筋によると、両江道に駐屯する国境警備隊25旅団252連隊2大隊3中隊で政治指導員を務めていた30代のパク氏が逮捕された。それも、他の隊員らが見守る中で階級章を剥ぎ取られ、手錠をかけられて軍用トラックに乗せられ連行されるという、徹底的に面子を潰す形が取られた。見せしめのためだ。
パク氏は今年2月まで、韓国に住む脱北者からの送金を、北朝鮮に住む家族に届ける送金ブローカー業を営んでいた。ところが、当局が中国キャリアの携帯電話ユーザーに対する取り締まりを強化、掃討作戦を行っている最中に、パク氏の顧客が逮捕され、芋づる式にパク氏もお縄となったという次第だ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面当局は現在、携帯ユーザーと繋がりのあった国境警備隊の軍官(将校)、隊員に対する大々的な捜査を行っている。
(参考記事:北朝鮮で続く「違法携帯電話」の取り締まり…さらに80人逮捕)当局は地域とのしがらみのない、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の暴風軍団を国境警備に投入したものの、トラブルが続発し、思惑通りに国境警備が強化されなかった。結局、人間に任せておいては同じことの繰り返しと感じた国境線にコンクリート壁と高圧電線を設置することにしたが、コロナ鎖国下で物資不足が深刻化する中、予定通りに完成できるか不透明だ。
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