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北朝鮮当局が大々的に繰り広げている、中国キャリアの携帯電話のユーザーに対する取り締まりキャンペーンの「違法携帯電話使用者掃討戦」。

今年6月下旬の時点で、約3週間の取り締まりの結果、全国で170人が逮捕され、うち一部は処刑されている。それ以降も取り締まりが続けられているが、それについて、両江道のデイリーNK内部情報筋が伝えている。

(参考記事:北朝鮮、中国キャリアの携帯ユーザーを処刑…全国170人を摘発

両江道では6月から今に至るまで、中国キャリアの携帯ユーザー80人が逮捕された。今までの月平均の逮捕者10〜20人よりも遥かに多く、両江道保衛局(秘密警察)の留置場には、正確な数は不明だが、前例がないほど多くの人が勾留されている。

かつては、2万元(約33万7000円)から3万元(約50万6000円)のワイロを支払えば、6ヶ月以下の労働鍛錬刑(懲役刑)や無罪放免にしてもらえるのが慣例だったが、大々的な取り締まりキャンペーンの始まりと共に、ワイロが通じなくなった。

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情報筋は説明した。

「両江道は将軍様(金正日総書記)の時代から、白頭山地区と三池淵(サムジヨン)地区で、(最高指導者が参加する)1号行事が頻繁に行われていたが、中国キャリアの携帯電話ユーザーを通じて、一般的な住民の動向はもちろん、1号行事の安全のために秘密に付すべき首脳部の動線と関連した重要機密まで漏れており、保衛部が掃討戦に続き殲滅戦に総力を傾けている」

(参考記事:金正恩氏の「デリケート情報」が洩れて10人が処刑の危機

最高指導者の動線を徹底的に隠蔽する必要性は理解できることだが、北朝鮮当局は細かい事件事故や物価などの国内情報の一切が漏れることに非常に敏感になっている。その割には次から次へと情報が漏洩してきたこともあり、今回のコロナ鎖国、国境警備や密輸、脱北の取り締まり強化と合わせて、携帯電話の取り締まりも強化しているのだ。

(参考記事:秘密主義国家北朝鮮で深刻化する機密情報ダダ漏れの実態

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ただ、塞がれていた抜け道に再び穴が開くようになった。1万ドル(約110万円)のワイロを支払えば、無罪放免にしてもらえるようになったというのだ。

北朝鮮では何らかの法律が施行されれば、法を広く周知する目的で違反者を逮捕し、処刑などの重罰を下す。取り締まりキャンペーンでも同様だ。しかし、そんな厳しい取り締まりがずっと続くわけではない。取り締まりがゆるくなり始めた頃合いを見計らい、「ワイロで罪をもみ消してやる」という提案がされるようになり、やがてはそれが一般化、法律そのものが骨抜きにされるというのが流れだ。

しかし、取り締まる側(保衛部)に対する上部の監視の目は厳しく、今までのように複数の人からワイロを受け取るのは非常にリスキーだ。そこで、一人から多額のワイロを受け取るスタイルに切り替えたのだという。こうして得られたワイロは保衛部の予算や職員への給料にもあてられる。

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ワイロで見逃された件数は不明ながら、両江道保衛局はキャンペーンの実績が充分に挙げられていないと金正恩氏から複数回指摘を受け、取り締まりを強化しているが、中国キャリアの携帯電話の使用は続いており、国家保衛省10局からも人員が派遣された。その結果が、80人逮捕だという。

道保衛局は、国家保衛省に従わざるを得ず、ユーザーの割り出しに全力を尽くし、過去に調査対象となった人を再調査するなどしている。

かつてのような「ワイロで共存共栄」という状況に戻るまでは、もう少し時間が必要なようだ。

(参考記事:取締り強化でも安心、北朝鮮で流行る「違法携帯電話デリバリー」