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北朝鮮の金正恩総書記は、1400キロに及ぶ中国との国境線に、人の背丈を超えるコンクリートの壁と3300ボルトの高圧電線の設置を命じた。今までは国境線と言っても、遮るものは川しかなかったため、国境警備隊の目を盗んで、或いは隊員とグルになっての密輸や脱北が横行してきたが、これを根本的にブロックするのが目的と思われる。

この命を受け、今年3月から工事が始まっているが、朝鮮労働党創立日の今年10月10日までに完成させよとの指示がくだされたと、両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

(参考記事:北朝鮮が中国との国境に「コンクリート壁」を建設…脱北・密輸防止で

情報筋によると、朝鮮労働党中央軍事委員会と内閣は先月26日、今年10月10日までにコンクリート壁と高圧電線の設置作業を無条件で終えよとの共同指示文を下した。

コロナ対策として国境の封鎖の徹底を指示した当局は、国境警備隊に加えて特殊部隊である11軍団、通称「暴風軍団」を投入したが、それと入れ替えに建設部隊を派遣し、コンクリート壁と高圧電線の設置作業に当たらせている。情報筋は、11軍団の撤収は冬季訓練に参加する事情もあったとしているが、期待された国境警備の効果が得られなかったからとも伝えられている。その撤収を急がせるために、完成日を10月10日にしたものと思われる。

(参考記事:金正恩の特殊部隊 「ポンコツ」過ぎて中朝国境から撤収

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当局は、国境警備隊の存在感の明確化も理由に挙げ、国境警備という本分を単独で遂行できるように条件を整えるべきだという点も強調されたとのことだ。国境警備隊にとって、自分たちの「シマ」に暴風軍団が入ってくることが面白いはずもなく、以前からの軍部隊同士の仲の悪さも相まって、トラブルが続発していた。

(参考記事:北朝鮮の特殊部隊と国境警備隊が大乱闘、死傷者多数

当局は、国境警備隊の環境改善を取り組むと同時に、駐屯地の入れ替えを検討しているとのことだ。この件は既に提議書が上げられ、党中央軍事委員会の批准を待つばかりとなっている。理由について情報筋は説明していないが、地域社会とのしがらみが生じ、住民の密輸や脱北を幇助(あるいは加担)する現状を問題視してのことと思われる。

入れ替え期間の前後に国境警備が手薄になり、コロナ対策にも穴が生じることが考えられるため、コンクリート壁と高圧電線の設置を急がせていると、情報筋は説明している。

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工事に当たる建設部隊だが、梅雨の長雨で工事がストップすることを念頭に置いて作業を急いでおり、とりあえず10月10日までに柱とコンクリート壁だけでも完成させ、外観上完成したようにした上で、高圧電線の設置に取り組む計画のようだ。

しかし、当初から工事は遅れている。予算は国が8割、地方政府が2割を負担することになっているが、わずか2〜3日分の工費しか調達できない有様で、工事を進めたくても進めようがない状況であるというのが情報筋の説明だ。

コロナ鎖国で貿易の本格的再開に至っておらず、国内の経済状況も最悪となる中、あれこれ理由を並べ立て、住民に税金の名で費用負担を強いるといういつものパターンを辿りそうだ。しかし果たして、それだけで予算が確保できるかは大いに疑問だ。

(参考記事:人々を餓死から救った「山奥の畑」からも税金を取り立てる北朝鮮