北朝鮮の国境の守りを担っているのは、国境警備隊だ。ところが昨年8月、「暴風軍団」として知られる朝鮮人民軍第11軍団の兵力が、国境警備のために派遣されるなどし、国境警備兵力が3倍増強された。
北朝鮮は新型コロナウイルス対策として国境を閉鎖し、これを違法に破る密輸と脱北を以前にも増して厳重に取り締まっている。
だが、それらで生計を立ててきた地域住民とズブズブの関係にある国境警備隊では、警備が務まらないと考えた当局が暴風軍団を増派したのだ。しかし、最近になって暴風軍団に撤収命令が下されたと、咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。
(参考記事:「気絶、失禁する人が続出」金正恩、軍人虐殺の生々しい場面)情報筋によると、会寧(フェリョン)、穏城(オンソン)、鏡城(キョンソン)など、道内の中国との国境に接する地域に投入されていた暴風軍団に対して今月5日、最高司令官(金正恩総書記)の撤退命令が下された。その理由をひとことで言うと「予想以上のポンコツ」だったからだ。
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人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面「暴風軍団が伝染病(コロナ)防御という情勢の要求に従いはしたが、平凡な国境地域の軍人たち(国境警備隊員)のように勤務し、基本戦闘任務を忘却しているとの分析がなされた」(情報筋)
昨年12月から今年3月にかけて行われた冬季訓練では、軍団の兵士らが割り当てられた区域から離脱する現象が起きるなどし、「基本がなっていない」との判断が下されたという。
情報筋は具体例を提示していないが、地域に派遣された暴風軍団は、トラブルメーカーそのものだった。昨年8月には兵士1人が中国で強盗する目的で脱北し、逮捕される事件を起こしている。また10月には、いじめの常習犯の上官を部下の兵士が射殺して逃走し、12月には兵士1人が武装したまま脱北するなど、北朝鮮国外のメディアに報じられた事件だけでもかなりの数に達する。
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また、国境に近づく人や野生動物を次々に射殺したり、民家に押し入って窃盗を働くなど、地域住民の評判は散々なものだった。さらに、自分たちの「縄張り」を奪われたことにいたくプライドを傷つけられた国境警備隊との間で乱闘騒ぎも起こした。
(参考記事:北朝鮮で特殊部隊と国境警備隊の衝突続く…「発砲」寸前の事態に)今月15日の太陽節(金日成主席の生誕記念日)を控え、国境にアリ1匹たりとも近づけるなという特別警備勤務方針が下されたが、軍当局は、特別警備終了後の6月1日から15日までの間に、国境地域に配備された暴風軍団の兵力を、指揮部のある平安北道(ピョンアンブクト)徳川(トクチョン)に撤収させる方針だ。ただ、現地では状況次第で撤収が前倒しになるかもしれないとの話が流れているとのことだ。
金正恩氏は、国境に人の背丈を超えるコンクリート壁と3300ボルトの高圧電線の設置を命じ、慈江道(チャガンド)では先月から工事が始まっている。建設を担当する部隊の派遣が予定より早まれば、その分、暴風軍団の撤収も早く行われるだろうというものだ。
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他の国境地域に派遣された暴風軍団についても順次撤収が行われると見られているが、同様に派遣された朝鮮人民軍第7軍団の動向について、情報筋は言及していない。