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海外に電話をかけるには、窓口に電話して相手側の電話番号を伝え、オペレーターにつないでもらう。すぐに繋がる場合もあれば、何時間も待たされることもあり、料金も3分間数千円と極めて高く、気軽にかけられるものではない――昭和末期までの日本の国際電話事情はそんなものだった。

メッセンジャーアプリなどを使い、料金や国境の壁など気にせず、世界中どこにでも気軽に電話をかけられるようになった今とは、比べ物にならないほど不便な時代だった。

ところが、2021年の今になっても、40年前の日本以上に国際電話をかけるハードルの高い国がある。他でもない北朝鮮だ。

そもそも、国際電話がかけられるのは貿易従事者など業務で海外に電話をかける必要が認められた人や、在北朝鮮華僑に限られる。そんな、信じられないような規制がさらに強化されたと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

平壌の情報筋は、最近になって国際電話に関する規制が強化されたと伝えた。

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華僑を例に挙げると、従来は中国のパスポートを持って国際通信センターや平壌市内のホテルへ行き、設置された電話を使えば、国際電話をかけることができた。盗聴されているとはいえ、比較的自由に通話ができた。それが今年に入ってから、手続きが非常に面倒になった。

居住地域の洞事務所(末端の行政機関)、分駐所(交番)、保衛部(秘密警察)を周り、事前に通信確認書を発行してもらい、国際電話カードを購入してようやく通話ができる仕組みに変わった。1分あたりの料金も7ドル(約770円)だったのが10ドル(約1100円)に値上げされ、10分間通話するには100ドル(約1万1000円)のカードを購入しなければならない。

また、国内の物価、食糧事情などについて話さないと誓約しなければならず、もし通話中に「コメ」「市場」と言った特定の単語を出したら最後、通話が途切れてしまうという。これでも、国際電話をかけることなど考えることすらできない一般国民に比べればまだマシだ。

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一方、咸鏡北道(ハムギョンブクト)清津(チョンジン)に住む華僑は、現地でも同様のシステムが導入され、中国に住む親戚に気軽に電話ができなくなり、食糧などを送ってほしいなどと頼むこともできなくなったと嘆いた。

その一方で、海外に親戚がいる人に対して「生活苦を訴えて、援助がもらえるような手紙を書け」との命令を出しているのだから、政策に一貫性がない。

(参考記事:「お手紙作戦」を展開し経済難からの脱却を図る北朝鮮

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市内の浦港(ポハン)区域に住むある華僑の女性は、2019年末に翌年の旧正月(1月25日)に合わせて中国の親戚のところに行った夫が、未だに帰国せず心配している。また、電話をかけようにも、通信確認書の発行手続きが極めて面倒で、担当者にワイロを渡さなければならず、1分10ドルの通話料では済まないというのだ。

(参考記事:北朝鮮、中国に出稼ぎに行ったまま帰らない国民を指名手配

深刻な食糧難が続く北朝鮮だが、たとえ電話をかけたとしても、「食糧価格が高い、生活必需品が手に入らない(から送ってほしい)」という話をすれば、電話が切れてしまい、中国の親戚に援助や仕送りを求めることもできず、当局のやり方に強い不満をいだいているとのことだ。

国際電話の規制強化は、一連の携帯電話に対する取り締まりと軌を一にする。金正恩総書記は、国境地帯で使われているチャイナテレコムなど中国キャリアの携帯電話から、国内情報が海外に漏れ、海外の情報が国内に入ってくる元凶と見て、取り締まりを今までになく強化している。ちなみに携帯電話を使えば、日本同様にメッセンジャーアプリを使ってチャット、音声通話、テレビ通話が可能だ。

国が通信網を握っている国際電話の規制強化は、そう簡単には緩和されないと思われるが、携帯電話の場合は、電波のすべてを把握できるわけではなく、時間が経つにつれ、取り締まりがワイロで骨抜きにされる可能性もある。今は国際電話を使えずにいる人々も、国境地帯に移動し、ブローカーから携帯電話を借りて国際電話をかけるようになることも考えられる。

(参考記事:処刑か自首か…金正恩が「外国のスパイたち」に迫る究極の選択