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韓国外務省の2019年の集計によると、韓国、北朝鮮以外に住む韓国系の人は民族全体の約1割にあたる約830万人。海外在住の日本人、日系人が約380万人(海外日系人協会の集計)に比べると、いかに多いかがわかる。

韓国では、海外に家族や親戚が住んでいて、行き来があるという人が珍しくないが、そこに脱北者が含まれていることはあまり知られていない。韓国に入国した脱北者は昨年9月の時点で累計3万3718人(統一省集計)。一昨年の調査では、61.8%が「北朝鮮に送金したことがある」と答えているが、その資金が、北朝鮮の市場経済化を下支えしていると言われている。

自主、自力更生を掲げる北朝鮮だが、脱北者という名の「出稼ぎ労働者」からの送金に頼る、海外依存型の経済になっているのは実に皮肉なことだ。

(参考記事:韓国在住の脱北者の約6割「北朝鮮に残した家族に送金」

それはともかく、北朝鮮当局は、改めてそこに目をつけた。両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋は、政府が昨年12月、新型コロナウイルス対策の国境封鎖で経済難、生活苦が深刻化していることの打開策として、こんな指示を密かに下した。

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「海外に親戚がいる者に手紙を書かせろ」

保衛部(秘密警察)は、密輸ができなくなったことで苦しくなった国境地域の住民のみならず、内陸地域の住民の間でも生活苦が広がっていることから、この指示に基づき、海外に親戚がいる者を探し出す調査を行い、見つければ手紙を書くように指示している。

保衛部は手紙の内容について、事細かく指示している。

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◯政治的に微妙なことについて書いてはならない
◯元気に暮らしているかといったありふれた挨拶文に続けて、生活苦を積極に訴えてもよい
◯ウイルスがなくなれば会いに行く、または会いに来てほしいということを書いてもよい

政府は「保衛部に対して手紙の内容を分析した後に、ひとりでも多く(海外からの)助けが受けられるように、あれこれ言わずに海外に住む親戚に速く手紙が届くようにせよ」との指示を下している。

また、送金があった場合には、道党(朝鮮労働党の各道の委員会)や貿易機関に手数料を払った上で受け取れるようにせよ、額が多ければ手数料を割り引けという指示も下している。

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幹部らは今回の指示を歓迎する空気だ。道党の幹部や保衛員(秘密警察)は、「このようなことをしてでも生き伸びよというのが国の意志」だと宣伝して回っている。

しかし、「お手紙作戦」はあまりうまく行っていないようだ。1945年の日本の敗戦、満州国の崩壊、その後の文化大革命のときの朝鮮族への弾圧など、現在の中国に住んでいた朝鮮族の中には、北朝鮮に帰国する人がいた。一方で、中国に残る人もいて、国境を挟んだやり取りが行われていたが、世代が変わり、親戚とのつながりがなくなってしまったという人が多いようだ。

また、1948年には5万人もいた北朝鮮在住の華僑も、徐々に数が減り、今では数千人。そんな彼らも、コロナ対策による生活苦で北朝鮮から逃げ出している。

(参考記事:華僑40人 、コロナ封鎖の北朝鮮から「覚悟の脱出」

今、海外にいる親戚がいる人と言えば、家族の誰かが脱北して韓国や第三国に住む脱北者家族が主流だ。情報筋は、今回の「お手紙作戦」に脱北者が対象になっているか触れていないが、「脱北者家族以外に海外に親戚がいる人がどこにいるのか」という現地から上がっている不満の声を伝えていることを見ると、どうやら対象外になっている模様だ。