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かつて、北朝鮮にとって労働者の海外派遣は、外貨稼ぎの柱のひとつだった。しかし、国連安全保障理事会が対北朝鮮制裁2397号を採択し、すべての国連加盟国に対して自国内の北朝鮮労働者を送り返すことを義務付けたことで、その道は完全に絶たれたはずだった。しかし、北朝鮮はあの手この手で制裁逃れを企てている。

(参考記事:奴隷扱いされる北朝鮮の派遣労働者たち…人権侵害追及にEUも乗り出す

その手法とは、技能実習制度や一般の滞在ビザで出入国を繰り返すといったもので、中国、ロシアへの派遣が続けられてきた。今月からはモンゴルへの派遣が再開されると韓国デイリーNKは伝えたが、それだけにとどまらない。

平壌のデイリーNK内部情報筋によると、今後派遣予定があるのは、シリア、カタール、クウェート、アラブ首長国連邦など。さらにエジプトとイランでは、原発の建設に従事させる予定があるという。

労働者派遣の最近の特徴は、民間人ではなく朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の兵士が多数を占めている点だ。情報筋によると、その割合は9割。民間人を使うよりも外貨確保が容易というのが理由だ。

民間人の場合、業種ごとに割合は異なるが、平均して月給の6割程度を「忠誠の資金(上納金)」として当局が徴収する。一方、軍の下戦士(二等兵)の場合、そもそも国内勤務でも給与が支払われないため、海外で働いても同じ規則が適用され、最低限の生活費を除き雇用者が支払う給与の95%以上が国庫に入る「メリット」があるのだ。

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また、兵士たちは無給で働くことを当たり前と考えているため、労働力と給与の搾取に対する不満が少ない。上官からの命令とあっておとなしく従わざるを得ず、「労務管理」が楽という別のメリットもある。

一方で、海外派遣労働者の選抜を担当する幹部にとっては不満だろう。今回、モンゴルに派遣される一般労働者の場合、4回に渡って資格審査を受ける。労働者はそのたびに担当者にワイロを渡さなければならず、総額は約1000米ドル(約10万9000円)に達するという。だが、兵士を派遣する形だと、ワイロを受け取るチャンスがなくなってしまうのだ。もちろん、軍内でワイロが飛び交う可能性は充分考えられるが。

労働者は派遣先で、軍隊と全く同じような組織体系の下で生活することになる。小隊は「組」、小隊長は「組長」、中隊長は「班長」と呼び名こそ言い換えられるが、実質的には何の変わりもない。このように兵士を民間人に偽装して海外に派遣する手法は、以前から使われていた。

(参考記事:北朝鮮、現役兵士を民間人に偽装して中東に派遣か

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海外派遣兵士を募集するのは建設部隊の7総局と8総局で、兵士は朝鮮人民軍系のチョルヒョン海外建設会社、陵羅(ルンラ)建設会社に所属し、建設現場、牧場、木材伐採場で働くことになる。ちなみにチョルヒョン建設は、2017年10月に米財務省の制裁対象となっている。

米政府の報告書は、同社はペルシャ湾岸諸国やアフリカに労働者を送り出し、1日平均14時間の長時間労働を強い、給与の7割を搾取、外出を禁止するなど移動の自由を制限し、最低限の食事しか提供せず、労働者は奴隷のような状態に置かれていると指摘している。

(参考記事:北朝鮮メディア「人権謀略騒動が狂気を帯びている」…米国を糾弾

兵士らは、めったにない海外経験ができるという希望を抱くが、あまりもの過酷な労働条件、劣悪な待遇に夢破れ、現場から逃げ出す者も出ている。

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(参考記事:「世界に暴露して欲しい」ある北朝鮮兵士の死を告発した一本の電話