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一時よりは改善したようだが、依然として良好とは言い難い北朝鮮の電力事情。雨が少ない気候なのに、「やってる感」の宣伝に役立つ水力発電所の建設を相次いで行なっているものの、手抜き工事などでまともに稼働できない代物を量産してきた。

(参考記事:北朝鮮の水力発電所が漏水で稼動停止、崩壊の危機に

一方、最近では別の自然再生エネルギーにも力を入れるようになっている。朝鮮労働党機関紙・労働新聞は昨年5月21日、首都・平壌を流れる大同江の中洲の綾羅(ルンラ)人民遊園地に以前からあった小規模な太陽光発電所を、中区域の100あまりの単位(企業・機関)から投資を募って拡張した「系統並列太陽光発電所」について紹介している。具体的な発電量には言及していないが、拡張前の倍になったと伝えている。

平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋は2019年6月、新義州(シニジュ)に風力発電と太陽光発電を利用した発電所が建設されたと伝えたが、メガソーラーとは言えないほどの規模だったようだ。それから2年、咸鏡北道(ハムギョンブクト)でもメガソーラーのプロジェクトは立ち上がった。

(参考記事:北朝鮮にメガソーラー誕生も電力難解消には程遠く

現地のデイリーNK内部情報筋は、北東部の羅先(ラソン)市が、今年1月の朝鮮労働党第8回大会で示された経済発展5カ年計画の期間中に、大規模な太陽光発電所の建設を決定したと伝えた。

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計画は既に内閣の批准を受け、先月から本格始動している。経済特区の羅先は観光やビジネスの外国人訪問者が多く、制裁前は中国との合弁企業が数多く操業していたが、電力事情は良好とは言えなかった。

(参考記事:外国人観光客からのクレームでホテル補修に忙しい北朝鮮

今年3月に開催された第1回市・郡党責任書記講習会で、羅先市には「自主的に電気を生産する」という目標が示され、市当局は、その貫徹に向けて動かざるを得ない状況に追い込まれていた。

そこで、市当局は大慌てでプロジェクトに手を付けたものの、メガソーラーの建設用地の確保すらできていないというのだ。日照条件のいい土地を選ばなければならないが、既に他の建物が建てられており、選定に苦心しているようだ。

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予算の問題もある。当局は、市内の機関、企業所、人民班(町内会)に資材輸入のノルマを割り当て、人民班の1世帯あたり5000北朝鮮ウォン(約85円)、青年同盟員1人あたり4000北朝鮮ウォン(約68円)、少年団員にはその半額の現金を上納せよと言い出した。

さらに、それ以上にもっと出せと言われ、20万北朝鮮ウォン(約3400円)以上出した者も少なくない。しかし、コロナ鎖国で商売がうまくいかず、生活苦に追い込まれている多くの市民や、二重、三重の負担を強いられている機関、企業所なども口々に不満を表しているという。

朝鮮労働党の羅先市委員会は、不満を抑えるために、「党の政策の貫徹においては、条件と言い訳はありえない、この事業に参加することで、党を前にして忠誠心の検証を受けるべきだ」などと、政治教養事業を行なっているが、そんなことで不満が収まるはずもない。

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強い不満を抑えつつ、ちまちまと集めた予算で、約20万人の羅先市民と機関、事業所すべての需要を賄うほどのメガソーラーが建設できるかは疑問だ。「やってる感」の演出に終わり、市民は従来の方法で電気を調達することになるのがオチではないだろうか。

(参考記事:金正恩氏から「感謝状」を受けた幹部、電気の横流しで逮捕