北朝鮮を訪れる外国人観光客の数は約10万人と言われている(2015年の推計)。一方で、中国から北朝鮮を訪れる観光客の数は1日1000人から2000人との、昨年6月現在の情報がある。冬季は観光客が減ることを考えても、年間の観光客数は10万人をすでに超えているものと思われる。

(参考記事:急増する中国人観光客を「軍用装備」で輸送する北朝鮮

当局は2017年に100万人、2020年には200万人の外国人観光客を誘致することを目標に掲げてきた。かつては「絵に描いた餅」と評価されていたが、この調子で行けば、達成がまるで不可能な話でもなくなってきた。

(参考記事:北朝鮮、「観光客100万人誘致を目指せ!」 観光活性化に特大級の大風呂敷

北朝鮮は、こうした目標達成のために馬息嶺(マシンリョン)にスキー場を建設し、三池淵(サムジヨン)地区、元山葛麻(ウォンサンカルマ)海岸観光地区などの開発に総力を挙げている。

(参考記事:北朝鮮「倒れた作業員は連れ去られ、戻ってこれない」魔の工事現場

またその一方で、北朝鮮の観光業界はさらに多くの外国人を受け入れるために、既存施設の問題点の解消に努めているようだと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると、道内の外国人専用ホテルが一斉に改修作業に入った。客の少ない冬季に、営業を続けながら一部のフロアを閉鎖して工事を行うというものだ。

改修は、施設を利用した外国人観光客からのフィードバックに基づくものだ。最も不満が多かったのが施設の状態が悪いことだった。昨年も、あるホテルで水道管が破裂したり、電線がショートを起こして停電したりして、宿泊客からの抗議が相次いだとのことだ。

(外部リンク:【動画】平城のチャンスサンホテルで、トイレに繋がる水道管が外れたときの様子

咸鏡北道の別の情報筋によると、羅先(ラソン)の白虎国際旅行社と清津(チョンジン)の国際旅行社は、自社のツアーに参加した外国人観光客からのフィードバックをもとに、ホテル側に施設の改修作業を強く催促した。

それに基づき、改修工事が始まった。古ぼけた客室の壁はペンキを塗ってきれいにしたが、数日経っても臭いが残っている。しかし、夏季の3分の1の料金で提供しているため、中国人観光客からはこれといったクレームはないとのことだ。

ここで注目すべきは、北朝鮮の旅行会社、ホテルなどが客からの率直な声に耳を傾けている点だ。北朝鮮のみならず社会主義の国では、従業員が客をどれだけ誘致しても、どれだけいいサービスを提供しても、給与に反映されることはなかった。そのため、サービスも設備もないがしろにされる傾向にあった。

それが外国人観光客からの不満に耳を傾け、積極的に改善しようとする姿勢を見せるほどに変化した。給与面もしくは何かしらのインセンティブが、動機付与に繋がっているものと思われる。

当局にとっては、かつて味わった観光業のうまみが忘れられないようだ。朝鮮半島の名勝、金剛山(クムガンサン)は1998年から約10年間、韓国からの観光客受入れを行っていた。訪問者数は延べ195万人に及び、北朝鮮は入山料だけでも毎年4000万から5000万ドルを得ていた。開城(ケソン)観光はわずか1年で中断したが、約11万人が訪れた。

南北融和ムードを受けて、金剛山観光の再開に向けた話題が韓国の新聞の紙面を賑わせている今、北朝鮮の観光部門にも力が入り、それが施設補修という形で現れていると言えよう。

観光業の振興を掲げる当局の姿勢に情報筋は、「中国人観光客が参加するツアーを行う旅行会社は、すべて中央の外貨稼ぎ機関に属しているので、観光が活性化しても地元住民の暮らしに助けになることはない」と批判的な見方をしている。

しかし、それは観光が社会にもたらす効果を過小評価しているものと言えよう。地元民は外国人との接触が制限されていると言っても、様々な経路を通じてその服装、消費行動などに触れることになる。それが、今まで「鎖国」同然だった地域に少なからぬ刺激を与えるだろうことは想像に難くない。

ちなみに情報筋が紹介した中国人観光客に人気のスポットは、鏡城(キョンソン)温泉だ。400年以上の歴史を誇り、かつては朱乙(チュウル)温泉と呼ばれたこの温泉。温泉水は53度から62度、無臭のアルカリ泉で皮膚病、神経痛、胃腸病、婦人病、関節炎に効果がある。日本の植民地時代には和式旅館があったようだが、今では旧ソ連風のサナトリウムがある。

(参考記事:北朝鮮ツアー、実は近くて普通に行ける北朝鮮旅行

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