町内会長に「禁断の発言」をぶつけた北朝鮮女性が処刑の危機

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故金日成主席は1974年2月、朝鮮労働党中央委員会第5期第8次全員会議において、「古い社会の遺物」である税金制度を完全になくすことについて討議、決定することを指示した。それを受けて最高人民会議は同年3月、「税金制度を完全になくすことについて」との法令を発表し、4月1日に世界初の税金のない国になったことを宣言した。この日は「税金制度廃止の日」に定められている。

しかし、現実は異なる。インフラの使用料、募金などの名目で、法的根拠のない物品が税金と同様に、国民から頻繁に徴収されることになった。1990年代から2000年代の中国で、地方政府が何かに付けて税金、使用料などを取り立て、深刻な社会問題となった「乱収費」と同じような状況だ。

(参考記事:北朝鮮の女性を追い詰める「犬の毛皮」供出命令

事実上の税金は国民にとって大きな負担となり、強い不満を招いているが、下手に口にして密告でもされたら「マルパンドン」(言葉の反動=反政府的言動)として処罰の対象となる。

北朝鮮北部の両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)に住んでいた女性も、不満を口にしたことで、ある日突然、保衛部(秘密警察)に逮捕されてしまった。

現地のデイリーNK内部情報筋によると、逮捕されたのは市内北東部の渭淵洞(ウィヨンドン)に住んでいた女性だ。

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町内の人民班(町内会)では以前から、古紙、古ゴム、くず鉄、ハギレなど様々な品物を事実上の税金として住民から徴収していた。町内でも最も貧しい暮らしをしている女性だが、不平不満を言わず、言われるがままに納めていたという。

しかし、状況が彼女を替えた。新型コロナウイルスだ。

恵山の経済は、合法、非合法の貿易で支えられてきたが、昨年1月にコロナ対策として国境が閉鎖されたことで、カネもモノも入ってこなくなり、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」の再来が噂されるほどになった。

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昨年8月と11月には市内に封鎖令(ロックダウン)が下され、3週間にわたって外出が禁じられたことも、市民の生活苦を加重させた。

(参考記事:密入国発生で再びロックダウンされた北朝鮮国境都市

おとなしかった女性だが、ついに不満を爆発させた。

「滞納した税金を払え」「苦しくても皆が払っている、なぜお前だけ払わないのか」としつこく催促してきた人民班長(町内会長)に、滞納した3ヶ月分の税金をしぶしぶ払った。

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その足で、町内の他の家々を訪ねて聞いてみたところ、まだ払えていないとの答えが帰ってきた。人民班長は、税金を取り立てるためにウソをつき、女性はそれに騙されてしまったのだった。

明日食べるものにも事欠く状態なのに、ウソをつかれて税金を払わされたことに女性は怒りを爆発させ、人民班長と、朝鮮労働党の政策を巡って口論となり、「反動だ」との言葉が飛び交い、髪を掴んでの大喧嘩となった。どちらが何を言ったかわからない状況であったにもかかわらず、女性の方が党の政策に反対したということになってしまい、保衛部に逮捕されてしまったのだ。

(参考記事:女性芸能人たちを「失禁」させた金正恩氏の残酷ショー

国境閉鎖による経済難、食糧難で、「苦難の行軍」同様のな状況に陥ったのに、税負担を強いられているとあちこちから不満の声が上がっているが、保衛部は、人民班長への反抗を党への挑戦とみなし、逮捕に踏み切ったというのが情報筋の説明だ。

市民は、保衛部が「国内で煮えたぎる不満の世論を鎮めるために、保衛部は女性を逮捕した」(情報筋)と見ており、見せしめとして極刑が下され、帰ってくることはないだろうと見ている。よくて教化所(刑務所)送り、最悪の場合は、市民に恐怖を与えるために、広場や競技場に市民を集めた上で、公開処刑にされるだろう。

(参考記事:2カ月で700人処刑も…金正恩が追い求める自己満足